いつか読書する日



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 坂道の多い小さな町。まだ薄暗い夜明け、牛乳瓶の詰まった鞄を背負って、今日も彼女は家々のあいだをひた走る。
 大場美奈子(田中裕子)。50才、独身。朝は牛乳配達、昼はスーパーで働き、日々を暮らしている。
 毎夜ひとりのベッドでする読書。頁をめくるかすかな音が、ひっそりとした家にこだまする。静かな生活。ただひとつ、胸の奥のあの人を忘れることが出来たなら……。
 
 この秋、密かなブームを起こしている、緒方明監督(『独立少年合唱団』)の最新作が登場!
 



e0076213_2043099.gif 映画館で予告を観たときから、もうずっと観たかった作品です。映画館に行くとすごい人で、人ごみが苦手な私はちょっと辛かったけれど、観終わったあとは感動で胸がっぱいで、本当に観て良かったと思いました。30年以上もひとりの人を想い続けるって、どんな気持ちなのかなあ。地味な映画ですけど、「純愛」が好きな人って本当はとっても多いと思うので、機会があったらぜひ観て下さい。すっかり田中裕子さんのファンになっちゃったなあ。あんな生活、私には無理だけれどちょっぴり憧れます。でも朝早くからあんな坂道を牛乳配達するのって、私には絶対無理かも。
★★★★★ ★★★★★ (10点)


e0076213_2044926.gif 私は学生時代、中年とは30代後半ぐらいかと漠然と思っていたが、この映画の宣材では50代を中年と呼んでいる。確かに100歳ぐらいまで生きられる現在の高齢化社会ではそうなのかもしれない。本作は高齢化社会を扱った映画であるが、従来ならメインになったはずの惚けた夫を世話する妻の話は一挿話で済まされ、本編は50代の中年の純愛物語である。若い頃に許されなかった恋を持続したまま普通の日常生活を続け、それが50代になってから破られる瞬間を田中裕子と岸部一徳が巧く演じている。『NANA』や『タッチ』のような若い子の恋愛映画もいいが、今後はこういうタイプの映画も増えてくるだろう。地味ながら硬派で美しい佳作である。
★★★★★ ★★★★ (9点)


e0076213_2051133.gif 物語そのものは地味だし悲惨なのですが、それに対峙する二人のたたずまいがどこまでも誠実で頑固でしかも謙虚。日常のどうしようもない出来事を、田中さんと一徳さんの堅実さが根底でぐっと支えていて、だから向き合う人間の心次第で事実はどんな色にでも変わりうるっていうことをちょっとだけ信じさせてくれる映画です。あと、中年の恋愛ってこんなふうにかっこわるくてみっともなくて、でもそれが本当なんだっていう、そういうふうに描いてもらえると私のような中途半端な若者らは現実的な夢みれていいんじゃないかな。偽りで塗り固めて美化しまくった不倫映画って多いけど、それらにはない品っていうものがこの映画にはあるように思います。
★★★★★ ★★★★★ (10点)


e0076213_2052777.gif とにかく田中裕子がいい。17歳の恋を引きずったまま独りで生きてきた「50歳の少女」の何と魅力的なことか! 淡々と過ごす日常の一こま、橋の上ではじめてその名を叫ぶその瞬間、そしてラストの笑顔……どの場面を取っても彼女一人で映画を息づかせている。「本を読む女」が「手紙」を出して、受け取り、その過程が「小説」に書きとめられ、その周囲を痴呆の老人が「文字」を求めてさまよう……文字に刻みつけられた記憶が、時間をかけて人を支えるものに育っていくという「言葉」を巡る物語としても秀逸。それだけに、あのラストはやや安易だと思う。
★★★★★ ★★★ (8点)
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by wakusei2ndnews | 2005-11-21 20:06 | movie
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