バスジャック

 
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 デビュー作『となり町戦争』で一世を風靡した三崎亜紀の第2作は全7編の短編集!
 レビュアー陣の評価はいかに?


e0076213_2122797.gif なんか乙一さんみたいだなあ、というのが第一印象です。乙一さんの本ほどには泣けませんでしたけど、どのお話も「よくこんなこと思いつくなあ」って感心しちゃうような不思議なお話ばかりで、夢中で読み通してしまいました。私が感動したのは、「私の頭の中の消しゴム」みたいな切ない恋物語『二人の記憶』と、最後の『』です。特に『』は最後に車椅子の男の子を「送る」ところで泣いちゃいました。『バスジャック』ってタイトルはなんか怖そうですけど、どちらかと言えばゾクゾクするんじゃなくて安心できる作品です。
★★★★★ ★★★(8点)


e0076213_2122212.gif 前作、となり町戦争を読んでて面白かったのは、一つのシステムとして戦争を描いていた点だ。この人は役所に勤めていた経験からだろうか?自分たちの感情とは別にいつの間にか動いているシステム、環境にとても敏感で、その不可視なものに対する意識がそのまま作品に表れる。この短編集でもそれは健在で見えないものとどう対峙するかがテーマの人なのだろうと思う。読んでて感じるのは諸星大二郎+村上春樹。諸星的な部分が強く出てるバスジャックと動物園は傑作、得に動物園は小説でしかできない作品だと思う。逆に春樹テイストのギャルゲー臭い「送りの夏」はイマイチ、辻仁成レベルで甘々。でもその両立が人気の源なんだろうなぁ。
★★★★★ ★★ (7点 )


e0076213_21224112.gif『となり町戦争』の悪い意味での青臭さと春樹臭にはがっかりさせられたが、この人のアイデア勝負的なところは明らかに短編向き。一人称のベタなナルシズムも短編であることによって軽減され、口当たりが良くなっている。古い例えでアレだが、爽やかな『世にも奇妙な物語』と言った体裁の物語は、気がつきそうで誰も気がつかないアイデア(ネタ)が安定した一人称の語り(ベタ)で調理されることによって、誰もが安心して読める作品に仕上がっていると思う。しかしその分食い足りないのも事実で、個人的には、表題作の『バスジャック』のネタからベタへの快楽なんかは、爽やかなバトロワ風味の長編にしたら売れると思うけど筆力的に無理かなあ。
★★★★★ ★ (6点)


e0076213_21225872.gif『となり町戦争』がヒットしたのはセカイ系的な問題意識をオタクの想像力から切り離したところで展開したのと、まさに「田舎公務員が無駄に文化系」センス全開の(いい意味での)青臭さがあったからだと思う。で、この短編集だけど、つまらなくはないが褒めるほどじゃないアイデアがずらりと並んで、それなりに読めるけど驚いたり揺さぶられたりは絶対しない一冊。手堅い出来ではあるんだけど、三崎にこれを期待している人がどれだけいることか。お勧めは「負け犬」寸前の女性を主役に据えた『動物園』。この話は「見られる」自意識の問題というテーマを「変身」というメタファーで展開したのが(ありがちだが)面白い。
★★★★★ (5点)
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by wakusei2ndnews | 2005-12-09 21:23 | novel
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