りはめより100倍恐ろしい

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 最近とっても心のこもった「ライトノベル特集」で心ある読者の関心を色んな意味で買い占めている角川「野生時代」。その切り札たる「青春小説大賞」第1回受賞作はなんと現役中学生が「ケータイ」で書いた作品だからというから驚きだ!
 中学時代、グループで「いじられて」いた羽柴少年。人気者には違いないが、はっきり言ってキツイ毎日を過ごすことになる「いじられキャラ」を脱出するために、高校バスケ部で権謀術数を用いていく……。
 果たして羽柴少年はいじ「め」よりもある意味恐ろしいいじ「り」から逃れられるのか!?
 
 角川「野生時代」が送り出す「新時代の青春文学」を徹底レビューします!



e0076213_22251353.gif 文学ってなんだか重くて暗くて、私には分からないような難しいことを考えているようなイメージだったんですけど、最近の10代のみなさんが書いた小説はどれもわかりやすいし、扱っているテーマも身近でとっても共感できるものばかりです。綿矢りさちゃんの『蹴りたい背中』でもちょっと難しかった私ですが、この作品は男の子たちの会話が楽しくて一気に読んじゃいました。あと高校時代のクラスのことなんか思い出せて、すっごくリアルでした。なんでみんな、私とお弁当食べてくれなかったんだろうなあ……とか、ちょっと凹みました。それにしてもこんな小説を中学生がケータイで書いちゃうなんて、さすが21世紀ですね!
★★★★★ ★★★★ (9点)


e0076213_22254434.gif 賞の候補作になった時に読んでダントツにコレが面白かったので受賞は納特だが、いざ出版され同じような河出系の作品と比較するとどうしても出遅れた感を感じてしまう。 仮にこの手のジャンルをスクールサバイバル文学と呼ぶなら、中高生が今感じているだろう小さな人間関係のキツさ、「いじり」というヌルい地獄の描写は秀逸で読ませるのだけど、そういう現状認識から一歩出ようという意識がある平成マシンガンズに心情的に軍配をあげたくなる。 まぁ、深く考えないでマンガの稲中や幕張のノリで楽しんでもそれなりに楽しめるんだけど少なくとも新しくはない。 それにしてもこの手の作品を書く若い子がどんどん増えてこのジャンル自体がチープ化するんだろうなぁと思うと暗鬱になる。
★★★★★ (5点)


e0076213_2226263.gif ここで描かれている「厄介さ」というのは、どこにでもある凡庸な、にもかかわらず極めて悲惨な類のものである。集団が安定するためのスケープゴートとして「いじられ役」が要請され、そこから逃れるために弱者同士の蹴落としあいが繰り広げられる。その打算と勘繰りのパワーゲームの勝者を目指しながらも、どこか甘さの残る主人公は、この年頃の男子の実像としては実にリアルだなあ、と10年前の自分を鑑みて思ったり。ただ、せっかく抜け出たと思ったいじり・いじられの因果律に、再び引き戻す結末には不満。そこから外へ出るのはそう難しいことじゃない。そんな貧しい関係性が場を支配するのは、結局自分たちが幼稚だからってことに気付こうよ。
★★★★★ ★★ (7点)


e0076213_2226212.gif 見事なまでに一昨年の文藝賞「野ブタ。(原作)」の変奏。中高生の陰惨な人間関係(キャラの立てあい)をコメディ調に仕上げる手法が完全に同じで、主人公が逆転負けするオチまで同じ。「いじり」というアイデアは面白かったのに、後半「いじめ」と変わらなくなるのもダメ。適度にリアルな描写は悪くないけど、言語センスで三並夏に負けている。要するに野生時代は河出「文藝」路線で行きたいってことなんだろうけど、そもそも河出スクールカースト系小説ってパクる価値のあるほどもの? 白岩玄にせよ、この作者にせよ、等身大の日常から逃げずに向き合うのは立派だけど、「半径3mの人間関係を1段階メタ視」できた程度で満足するなよ。そこはあくまで出発点。まだまだ意地悪さが足りないなあ。
★★★★ (4点)
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by wakusei2ndnews | 2006-03-22 22:26 | novel
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