少女七竈と七人の可愛そうな大人


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 淫乱な母親を持ったがために、数奇な運命に翻弄される少女・七竈。ライトノベル界の林真理子にしてお姫様・桜庭一樹がリリカルかつファンタジックな文体で贈る話題の新作をレビューします。



e0076213_233198.gif もしかしてこの兄妹(姉弟?)って、いけないことしちゃうのかも……と思って、ドキドキしながらページをめくっていたのですけど、普通に(そして綺麗に)終わっていって安心しました。最初から色んな男の人と関係を持つ女の人の話から入っていったので、七竈ちゃんの未来を心配していたのですけど、考えすぎだったみたいです。それにしても、大人になるって何かを失うことなんですね。うう、悲しい……。でも、この小説はそんな悲しさの中に宿る美しさがとっても素敵な小説です! う~ん、これが文学って感じですか? なんかウットリしちゃいます。まだ若いのにこんな小説書いちゃうなんて、桜庭一樹さんってすごいんですねぇ。
★★★★★ ★★★★ (9点)



e0076213_23315151.gif 少女で半身としての少年で女の性で報われない悲恋で成長物語で感傷的でエセ古風な少女小説風の文体で、とまあ、目立って言及されやすい点を列挙すると、毎回とは言えそのあざとさにうんざりする。幼年時代の比喩としての鉄道模型なんかも分り易すぎ。ただし、個々の要素を取り上げて着目すると詰まらないのだけど、シンプルな成長物語の構図の周囲に「可愛そうな」大人たちを配し、書割めいたミニマルな文体で人形劇の様にキッチュに仕立てた雰囲気で、作品総体としては器用にまとまっている。先輩後輩の掛け合いや、いんらんの母とビショップの乾いた語りも良い味を出してて小説として楽しい。作家として成熟した桜庭一樹が窺える作品。
★★★★★ ★★ (7点)



e0076213_2332586.gif 序章の「辻斬りのように」を「野生時代」で読んだときは、これでは、本人の過去の著作の焼き直しというかその続きが読みたいだけではないか、と怒りを覚えた。ただ、単行本で読むと、桜庭が一貫して追い続ける、「少女と少女を取り巻くセカイ」というテーマは不変だし、いちいち視点を少しづつズらして行く描写はさすがに巧みなので、なるほど、それなりの読後感は残るように出来ている。桜庭という作家の初物買いにはうってつけかも知れぬ。しかし、本人のキャラの問題なのか、世間との接触を極力抑えようとする少女の純血主義ぶりがまだ少し鼻につく。少女・七竈が母と同じ道をたどる過程を描けるかが作家・桜庭一樹の分岐点のような気がする。
★★★★★ ★ (6点)



e0076213_23323832.gif 『ブルースカイ』が「昔の日本SF+5年前に流行ったセカイ系気分」なら今回は「古風な少女小説の装いで小奇麗にまとめました」って感じ。「なんだって勉強すれば器用に書けますよ」という自己主張をしたがる所といい、実際にそれができてしまう所といい、一般文芸に本格進出すれば姫野カオルコより早く林真理子になれるかもしれない(笑)。それは同時に内容が簡単に因数分解できてしまうつまらなさがあるということでもある。そして、現時点での桜庭の市場はこのような因数分解をありがたがるヌルい場所だということなのだろう。作者の器用さが得がたいものであることは間違いないのだが、「ライトノベルからの背伸び組」のために設計されたことが丸わかりの「あざとさ」「安っぽさ」はどうしても弱点になってしまう。
★★★★★ (5点)
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by wakusei2ndnews | 2006-07-18 23:32 | novel
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