手塚治虫の往年の名作コミック『どろろ』を、『黄泉がえり』『カナリア』の塩田明彦監督が映画化! 妻夫木&柴咲カップル主演で話題の映画を徹底レビューします! もう、私の大好きな妻夫木クンと柴咲コウさんが出ているだけで、おなかいっぱいです! まず映像がハリウッドの映画みたいにすごくて、実写でもこんな風にファンタジーの世界が作れるんだなあ、って感心しました。アクションもカッコ良くて、次はどんな戦いがあるのか楽しみに観ていたんですけど、最後は突然家族の物語になってビックリしました。でも、ちゃんと中井貴一さんのお父さんや瑛太くんと仲直りできて良かったです。エンディングのミスチルは、あんまり映画の雰囲気とあっていなかったけれど、好きなので許します! 続編がありそうな感じだったので、今から楽しみです。 ★★★★★ ★★★ (8点) 「何に見える?」ってのはきっとこの映画のことを言ってるんだろうね。CGと無国籍サウンドの組み合わせで作られた、出自も根拠もよくわからない混沌とした映像が、百鬼丸の継ぎ接ぎだらけの身体をメタファーとして語られる。無口な男と饒舌な女のロードムーヴィーというプロットは『カナリア』と共通のものであるし、実際、前作と酷似したカットがいくつもある。その制作規模に見合った制約を受けるであろう商業映画の最前線でも一貫した問題意識を探求し続けている手腕は評価しないわけにはいかないだろう。 興味深いのは、複数の名を持っていた百鬼丸から、どろろは名を盗んで「兄弟」になるが、真の「兄弟」である多宝丸に出会い、母に遭遇するに至って、多宝丸という名の指示対象が分裂するのである(百鬼丸が弟の名を盗んだとも言える)。百鬼丸はその呪われた運命をどろろに「目を介さずに」伝え、取り戻した真の目で再びどろろと対峙する。壁というより、どちらかといえば巨大な張りぼてのような物体が建つ丘で、血統によって保証された単一性を巡って家族は再会し、そこで百鬼丸は「継承」と「断絶」を同時に選び取る。高くそびえ立つ城を出て、広い大地を歩きだすカットはこの上なく清々しい。 それにしても百鬼丸はもう生殖器を取り戻したのだろうか。もし今後の展開があるのなら、それはとても重要なことだと思うのだが。 ★★★★★ ★★★ (8点) 評論家のミルクマン斉藤は、親(大人)たちの身勝手さに傷つけられながら、なおも逞しく生き、自立するこの映画の主人公たちを過去の塩田作品の子供たちと結びつけ絶賛しているが、『害虫』や『カナリア』のような現代を舞台にした傑作を作った後で、なぜ今一度、出鱈目な戦国時代に舞台を移し、マンガの実写化という形でそのテーマを追究する必要があったのかを私は問いたい。それは追究ではなく、明らかに作り手の後退である。寓話に甘んじている。そもそも作家性うんぬん以前に、映画としてこれはどうかと思う箇所が山盛りある。特にヒドいのはラストだろう。瑛太が死んでから事件が団子式に三つ四つ急展開する。無茶もたいがいである。 ★ (1点) 基本的に『カナリア』と全く同じ話。間違った父親(オウム、中井貴一)に(成長する)身体を奪われた主人公の男の子(光一、百鬼丸)が、それを取り戻すために旅立つが、最後は自ら「奪われた家族の回復」を断念して、旅の途中で知り合った少女(ユキ、どろろ)と新しい家族をつくるべく旅立つ、と。 だが、こういった主題・プロットがB級娯楽活劇であるこの映画の中で十分に展開されたとは言えず、散りばめられた暗喩もあまり機能していない。終盤の混乱した展開はその帰結である。 単純に娯楽作として考えても、終盤は「敵の城に乗り込んで大立ち回り」以外にあり得ないはずなのに、わざわざラスボスが城の外まで出てきてタイマン張ってくれるあたりでかなり白けてしまう。構成、あるいは予算配分のミスだろう。 あの『どろろ』をやる以上、こういった主題を孕むことは回避し得ないのだけど、展開が下手糞なせいで結果として、本作は主題が映画の足を引っ張っている典型例となっており、完成したフィルムは劣化『カナリア』以外の何者でもない。 付け加えるなら、ゼロ年代版『どろろ』の成功例は、言うまでもなく『カナリア』であり、『鋼の錬金術師』である。本作を観て引っかかるものがあった人は、ぜひこの2作品を手にとってほしい。 ★★★★ (4点)
by wakusei2ndnews
| 2007-02-19 01:16
| movie
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