第二次惑星開発委員会 今日のクロスレビュー
2007-04-17T19:04:16+09:00
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Excite Blog
それでもボクはやってない
http://wakusei2.exblog.jp/5217048/
2007-02-24T14:03:00+09:00
2007-04-17T19:04:16+09:00
2007-02-24T14:03:04+09:00
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movie
『Shall we ダンス?』の周防正行監督の最新作。痴漢冤罪を通して日本裁判の実態を描く社会派映画。冤罪で捕まったあるフリーター青年の戦いの日々を描く。
女の子に酷いことをするような男の人は、どんどん取り締まってしまえばいいってずっと思っていて、この考え自体は今も変わっていないのですけれど……警察ってよくニュースでやっているみたいにやっぱりものすごく問題の多い所だったんですね。ついさっきもテレビで冤罪事件の報道を見ました。本当に痴漢するひとをなくすためにも、日本の警察や裁判を変えていかないといけないなってすごく思いました。明日からもっとちゃんと新聞を読んで、こういうことについてしっかりと考えたいと思います。映画がはじまってから終わるまで、あっという間で一度もほかの事を考えなかったんですけど、見た後は暗い気持ちになりました。
★★★★★ ★★★ (8点)
「男は全員、痴漢をする動機がある」。という台詞には絶望させられた。ただ触れ合いたいという気持ちが大きくなってしまっただけなのに。それはそれで許されることのない無法であり罪なのは百も承知。この映画で痴漢という犯罪を選んだのはただの例えで、今の日本の裁判が孕んでいる矛盾や問題点をしっかりと見定めるべきだが、僕はそれよりも男と女という二つの人間が存在する社会での生きていき辛さ。を再確認してしまった。もっさい男の証言よりも女子中学生の涙ながらの証言を誰でも信用してしまうよなあ。そういう人情っていうものも時には必要だとは思うけど。人が人を裁くこと自体矛盾のかたまりなので「とりあえず」の判断しかできないのか。本田博太郎の怪演は必見。
★★★★★ ★★★ (8点)
法廷の審理の行われている空間と傍聴席は、一見してスクリーンと観客のようにも思えるのだが、実際それをスクリーンの中の出来事として観ていると、淡々と事実の確認を進めてゆく判事らの冷徹な態度に反して、その進行具合に一喜一憂する傍聴席の芝居の方がむしろ際だって感じられるといった逆転が起こっている。当然このような逆転は見方さえ違えばそもそも起こりえぬものではあるのだが。
手の行方をめぐる議論、現場で被告を弁護した女性の発言の解釈の食い違いが、観ること、聞くことの記憶として蓄積される際の恣意性を暴露して、劇中の台詞にもあるように「何が本当のことかわからなくなる」ほどに単一の視線を揺さぶり、最終的に視線を逆転させる過程はなかなかスリリング。
役者等の好演も手伝って、細かい制度に関することなど、説明的な台詞も巧くさばいており、普通の社会派映画としても十分鑑賞に堪える。エンディングの弦楽四重奏っぽい曲も良い。ただ、学校教師が無理矢理生徒に見せてしまいそうなところが心配ではある。
★★★★★ ★★ (7点)
前作の微温的な中年妄想の肯定話にはまったくノれなかったのだけど、本作の迫力にはまいった。裁判というこの社会を根本から支えているシステムの暴力性、危うさを突きつける、と描いてしまえば一本の矢を真っ直ぐに飛ばすだけの作業に思えるが、単純で強烈な構造であるが故にごまかしのきかない力量が求められ、細部では逆に小テクを連発しなければならない――そんな困難な道を選択し、見事にやりとげた良作だと言えるはず。脚本の構成の妙、ドラマチックになりすぎず、かといってドキュメント臭くなりすぎない演出の匙加減、どれを取ってもお手本のようだ。難点があるとすれば、もう少し観客を巻き込んだ内容(裁判員制度導入問題に絡ませるとか)にしないと切込みが浅いのと、こういった社会派ネタを喰らうと思考停止して褒めまくる義憤系ファンがウザいことくらいだろうか(笑)。
★★★★★ ★★ (7点)
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どろろ
http://wakusei2.exblog.jp/5182705/
2007-02-19T01:16:00+09:00
2007-02-19T01:16:46+09:00
2007-02-19T01:16:13+09:00
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movie
手塚治虫の往年の名作コミック『どろろ』を、『黄泉がえり』『カナリア』の塩田明彦監督が映画化!
妻夫木&柴咲カップル主演で話題の映画を徹底レビューします!
もう、私の大好きな妻夫木クンと柴咲コウさんが出ているだけで、おなかいっぱいです! まず映像がハリウッドの映画みたいにすごくて、実写でもこんな風にファンタジーの世界が作れるんだなあ、って感心しました。アクションもカッコ良くて、次はどんな戦いがあるのか楽しみに観ていたんですけど、最後は突然家族の物語になってビックリしました。でも、ちゃんと中井貴一さんのお父さんや瑛太くんと仲直りできて良かったです。エンディングのミスチルは、あんまり映画の雰囲気とあっていなかったけれど、好きなので許します!
続編がありそうな感じだったので、今から楽しみです。
★★★★★ ★★★ (8点)
「何に見える?」ってのはきっとこの映画のことを言ってるんだろうね。CGと無国籍サウンドの組み合わせで作られた、出自も根拠もよくわからない混沌とした映像が、百鬼丸の継ぎ接ぎだらけの身体をメタファーとして語られる。無口な男と饒舌な女のロードムーヴィーというプロットは『カナリア』と共通のものであるし、実際、前作と酷似したカットがいくつもある。その制作規模に見合った制約を受けるであろう商業映画の最前線でも一貫した問題意識を探求し続けている手腕は評価しないわけにはいかないだろう。
興味深いのは、複数の名を持っていた百鬼丸から、どろろは名を盗んで「兄弟」になるが、真の「兄弟」である多宝丸に出会い、母に遭遇するに至って、多宝丸という名の指示対象が分裂するのである(百鬼丸が弟の名を盗んだとも言える)。百鬼丸はその呪われた運命をどろろに「目を介さずに」伝え、取り戻した真の目で再びどろろと対峙する。壁というより、どちらかといえば巨大な張りぼてのような物体が建つ丘で、血統によって保証された単一性を巡って家族は再会し、そこで百鬼丸は「継承」と「断絶」を同時に選び取る。高くそびえ立つ城を出て、広い大地を歩きだすカットはこの上なく清々しい。
それにしても百鬼丸はもう生殖器を取り戻したのだろうか。もし今後の展開があるのなら、それはとても重要なことだと思うのだが。
★★★★★ ★★★ (8点)
評論家のミルクマン斉藤は、親(大人)たちの身勝手さに傷つけられながら、なおも逞しく生き、自立するこの映画の主人公たちを過去の塩田作品の子供たちと結びつけ絶賛しているが、『害虫』や『カナリア』のような現代を舞台にした傑作を作った後で、なぜ今一度、出鱈目な戦国時代に舞台を移し、マンガの実写化という形でそのテーマを追究する必要があったのかを私は問いたい。それは追究ではなく、明らかに作り手の後退である。寓話に甘んじている。そもそも作家性うんぬん以前に、映画としてこれはどうかと思う箇所が山盛りある。特にヒドいのはラストだろう。瑛太が死んでから事件が団子式に三つ四つ急展開する。無茶もたいがいである。
★ (1点)
基本的に『カナリア』と全く同じ話。間違った父親(オウム、中井貴一)に(成長する)身体を奪われた主人公の男の子(光一、百鬼丸)が、それを取り戻すために旅立つが、最後は自ら「奪われた家族の回復」を断念して、旅の途中で知り合った少女(ユキ、どろろ)と新しい家族をつくるべく旅立つ、と。
だが、こういった主題・プロットがB級娯楽活劇であるこの映画の中で十分に展開されたとは言えず、散りばめられた暗喩もあまり機能していない。終盤の混乱した展開はその帰結である。
単純に娯楽作として考えても、終盤は「敵の城に乗り込んで大立ち回り」以外にあり得ないはずなのに、わざわざラスボスが城の外まで出てきてタイマン張ってくれるあたりでかなり白けてしまう。構成、あるいは予算配分のミスだろう。
あの『どろろ』をやる以上、こういった主題を孕むことは回避し得ないのだけど、展開が下手糞なせいで結果として、本作は主題が映画の足を引っ張っている典型例となっており、完成したフィルムは劣化『カナリア』以外の何者でもない。
付け加えるなら、ゼロ年代版『どろろ』の成功例は、言うまでもなく『カナリア』であり、『鋼の錬金術師』である。本作を観て引っかかるものがあった人は、ぜひこの2作品を手にとってほしい。
★★★★ (4点)]]>
鉄コン筋クリート
http://wakusei2.exblog.jp/5168582/
2007-02-17T00:05:44+09:00
2007-02-17T00:05:44+09:00
2007-02-17T00:05:44+09:00
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movie
松本大洋原作の人気コミックスが遂に映画化!
スタジオ4℃がその技術の粋を凝らした話題の映画版をレビューします。
感動しました! 年末年始にかけて2回観に行って、今も部屋でひとりでシロの物真似をしています……! と、いうのは流石にうそですが、それくらい感激したのは本当です。本当に純粋なものって何なのか、この映画から私は教わった気がします。映像もとってもきれいで、もっと汚いイメージだった原作の「宝町」が、なんだかテーマパークみたいにカラフルで楽しい町に思えてきました。声優さんもすっごくよくて、蒼井優ちゃんも、クドカンさんも、そしてモックンも、あのキャラのイメージにピッタリで最高にハマっています! オタクの人って芸能人ってだけで嫌っちゃうけど、それって偏見だと思いまーす!
★★★★★ ★★★★★ (10点)
映像的には原作とかなり異なるテイストながらも確固たる世界観を構築していて良い出来。キャスティングもシロ・クロの二人を除けばなかなか味のある声が揃っている。ストーリーも「シロとクロの物語」としては手際よくまとまっているのだが、ただ、原作の根底にあった「失われゆく『昭和』の風景への惜別」というか、町が人を作り人が町を作るという関係の消滅に対する寂寞感、そういう部分は(おそらく意図的に)排除されている。原作が描かれた頃とは時代も変わってしまっているので、それは映画として正しい選択なのだろう。しかしそのために宙に浮いてしまった部分も多いし(例えばもう一方の主役である木村の存在)、それらを無視して「シロとクロの物語」だけを取り出してどれほどの意味があるのだろうかとも思う。原作を読んでない人にはそれほど気にならないことなのかもしれないけど。
★★★★★ (5点)
松本大洋の原作コミックは昔友人から貸りて読んだ。そのときの感想は絵のテクニックは凄いが、内容は陳腐だな、というものだった。それから10年以上経過し、今回アニメ映画化されたわけだが、印象は全く同じ。アニメのテクニックは凄い。原作の、いい意味でごちゃごちゃした街を見事にデジタルアニメ化して見せたのにはびっくり、しばらくは口をあんぐり開けて見ていた。けど凄いのはそこまでで、光と闇のわかりやすい象徴であるシロとクロを始め、ステロタイプのキャラクターばかりが登場して織りなす物語は原作と同じで薄っぺらく陳腐。観念的なまま終わらせてしまうラストもつまらない。蒼井優が声優としても優秀なのはわかったが。
★★★ (3点)
『マインド・ゲーム』のような衝撃はないものの、少なくとも映像表現に関してはスタジオ4℃がこれまで蓄積してきたノウハウの集大成ともいえる完成度を持っている、と言えるだろう。特に美術と音響の達成は特筆すべきものがある。蒼井優も巧い。しかしその反面、シナリオ面はボロボロと言うしかない。そもそも松本大洋って90年代前半のオモイデに頭をもってかれた中年サブカル(下北病にかかっている感じの)どものせいで妙に値上がりしているけど、はっきり言って中身はない(笑)。暴力性と表裏一体の無垢さをドッベルゲンガーという陳腐なアイテムで表現しちゃうあたりの貧困な想像力は、今時辻仁成でもやんないわけで、この人間理解の浅さは『永遠の仔』を観て心理学部に殺到する学生並。『ストロベリーショトケイクス』のときも思ったのだが、90年代前半サブカルを現在に耐えうるものにするためには、かなりの取捨選択と洗練が必要だと思う。あの頃のオモイデを大切にしたいなら、もっと頑張ってください。
★★★★★ ★ (6点)
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パプリカ
http://wakusei2.exblog.jp/4998831/
2007-01-23T21:56:34+09:00
2007-01-23T21:56:34+09:00
2007-01-23T21:56:34+09:00
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movie
『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』の今敏監督最新作は、筒井康隆の『パプリカ』。映像化不可能を言われていた原作を、マッドハウスの実力派スタッフたちはどう料理したのか!?
久しぶりに面白いアニメ映画を見ました。もう、次に何が起こるかまったくわからなくて、場面が変わたびに心臓がドキドキ。だってこのお話と世界観だと、本当に展開が想像できませんから! やっぱりアニメ映画って、こうじゃなきゃいけません! 劇場を出たあと、なんだか本当にここが現実なのかどうかわからなくなって、思わず哲学っぽいことを考えちゃいました。これも映画の魔力ですよね! あと、古谷徹さんのキャラがものすごく可愛かったです。なんか癒し系で、パプリカが好きになっちゃうのもなんかわかる気がします。今から今監督の次の作品が楽しみです!
(10点) ★★★★★ ★★★★★
今敏作品はデビュー作からずっと劇場で見ているが、私が初めて面白いと思ったのは前作『東京ゴッドファーザーズ』からである。それは実写とアニメとのズレを見せることの面白さであり「こういうアニメ作家だったのか」と改めて驚いた。『パプリカ』は再び『千年女優』的な幻想世界をやるというので心配したが、結果からいえば杞憂であった。今の偏執的ともいえる細かい描き込みは筒井康隆ワールドの狂気を描くのにぴったりだったし、映画めぐる映画という主題も『千年~』より掘り下げて描かれている。もはやアニメーションの最先鋭は細田守や今敏であり、宮崎駿(ジブリ)や押井守は完全に旧世代である。それをはっきり確認できたのが2006年であった。
(8点) ★★★★★ ★★★
冒頭からめくるめく洪水のような映像に圧倒される。かといって決して「難解」なだけで作ってはいない。一娯楽映画として出来は二重丸。ただし他の映画からの拝借や、「夢」のビジュアルがまんま大友克洋であったりと今監督の引き出しは少々底が見えてきてしまったかな。ラスボスの倒し方も少し弱いとも思った。
それと06年の声優MVPを決めるなら古谷徹に一票。『カイジ』のナレーションといいこれのデブ学者といい、まだまだ役の幅が広がってこれからも楽しみ。反面林原めぐみの演技は安定した上手さはあるもののこれといった新鮮味はなかったな。しかし「人間顔じゃない、中身よ」と言われたら立つ瀬がないじゃないか。
(8点) ★★★★★ ★★★
相変わらず何を撮っても事実上「同じ」映画にしかならない今監督。今回もこっちの想像を半歩たりともはみ出さない内容だったが、これはアベレージヒッターとして円熟してきた証拠として素直に評価すべきでしょう。少なくとも、これが今作品初体験なら、チケット代以上に濃厚でスリリングな映像体験を満喫できるはず。ただ、二度目、三度目だとやや物足りないかもしれない。さらに付け加えるなら、筒井自身はもとより、いまどき萌えアニメでももう少し気の利いた形でのメタフィクションを見せてくれるのに、21世紀の現代に「夢と現実が混濁する」なんて単純でベタベタなメタ劇(笑)は、いくらなんでもしんどいよねぇ。
(6点) ★★★★★ ★]]>
リーンの翼
http://wakusei2.exblog.jp/4772877/
2006-12-22T00:00:04+09:00
2006-12-22T00:00:04+09:00
2006-12-22T00:00:04+09:00
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others
あの富野由悠季監督の最新作OVA『リーンの翼』が、ついに完結! 日米ハーフのエイサップ鈴木を主人公に新たなバイストン・ウェルの物語がここに展開。元・特攻隊員にして、異世界の王となった前作(小説版)の主人公・迫水が、21世紀の東京に復讐するために侵略の手を伸ばす! 戦後日本に対する愛憎入り混じる怪作を、徹底レビューしました。
正直言って4回目くらいまでお話がよくわかりませんでした。なんか変な名前の登場人物がいきなりたくさんでてくるし、私ではとてもじゃないですけど頭に入りきりません~! でも、本当にこういうパニックがあったら、人間って結構こんな風になるんじゃないかなあ、とは思いました。後半はオーラバトラーの闘いがとってもすごくて、退屈はしませんでしたけど、なんかいきなり歴史とか重いテーマが入ってきてビックリしました。いつのまにかエイサップ君とお姫様がラブラブになっていたのもちょっと驚き。うーん、まだ整理できないなあ。
(7点) ★★★★★ ★★
日本の防衛問題にはじまり、家庭不和、過剰人口、技術至上主義への警鐘、在日朝鮮人差別に至るまで、ありとあらゆる「面と向かいあわなければならない」ものをすごい勢いでかき混ぜて、ロボット活劇の枠に押さえ込んだ超力技作。主役は一応エイサップ鈴木なんだけど、このヘンな名前じゃなければ、存在感は皆無だっただろう。 だって終始サコミズ王に食われっぱなしだったから。 ああいう野心家を描かせると富野は本当に上手い。『24』でお馴染み小山力也の熱演もあいまって存在感は圧倒的。 大の「男」を主人公にして物語を描く、って今の日本のアニメでは貴重だ。 最後の締めがちょいとご都合主義なのが-1点。リュクスの絶対領域に+2点。
(7点) ★★★★★ ★★
こりゃひどい。30分×6話というのは確かに一つの物語を成立させるのに十分な長さではないかもしれないが、それにしてもこのとっ散らかりぶりはあまりにも無惨。登場人物たちの行動原理もほとんど意味不明のまま物語は脈絡もなくあっちに行ったりこっちに行ったりして、そしてまったく収拾のつかないまま終わる。なんのためにこんなマイナーな作品を掘り出してきたのか。単に太平洋戦争語りをしたかっただけなのか。それにしたってこんな情緒的なだけの語りにいまさら意味があるとも思えない。ただ終盤のサコミズ王の狂乱っぷりは『∀ガンダム』のギンガナム御大将に迫るものがあり、ネタとしては面白いが……。
(2点) ★★
富野監督の悪い癖が出てしまった作品。序盤の速すぎる展開と説明不足は最近の富野作品共通の致命的な欠点なのだが、周囲に指摘できる人がいないのか治る気配もない。中年信者はこれもまた「味」だと解釈してくれるだろうが、そんな連中に受けて本当に嬉しいんですか? と尋ねたくなる。その一方で終盤、サコミズ王(元特攻隊員)が21世紀の東京に絶望して暴れまわるシーンは圧巻。ウヨとかサヨとか、低レベルな次元を超越した(笑)富野電波&ほとばしる情念のあふれる演出は、病的だが(いや、それゆえに)魅力的。若い人は長所と短所を両方発見するつもりで観るといいと思う。
(5点) ★★★★★
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ストロベリーショートケイクス
http://wakusei2.exblog.jp/4722617/
2006-12-12T23:34:00+09:00
2006-12-14T12:56:54+09:00
2006-12-12T23:34:26+09:00
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movie
泣いてすがった大失恋を経ても尚、恋がしたいと口癖のようにつぶやく里子。稼いだ金で一人で生きて死ぬために5階以上の高層マンションを買うつもりでいるデリヘル嬢の秋代。口を開けば男と占いのことばかりのルームメイト・ちひろに、過食と嘔吐を繰り返すイラストレーターの塔子。4人の女性の奇妙な関係とそれぞれの度たちを描く。原作は魚喃キリコのコミック『strawberry shortcakes』。
もうこんなに共感できた作品は久しぶりです。最初に原作を読んだときは、なんか出てくる人たちがみんなネガティブなことを考えるのがカッコイイと思っていそうなところがイヤだったんですけど、あれから何年もたってこのお話と映画版で再会してみると、不思議とみんなの気持ちが分かるからビックリ。思わず原作も読み返して、ああ、こんな話だったのかって、なんか感心しちゃいました。恋愛ってやっぱり楽しいことばっかりじゃないですよね。でもしばらく経つといつの間にかまた恋がしたくなってくるから不思議です。あー、恋でもしたいっすねー!
(9点) ★★★★★ ★★★★
都会暮らしのやさぐれた20代独身女性4人のやさぐれた生活を淡々と描いた物語。池脇千鶴がかわいいのは当たり前としても、男からすると共感するのが難しいようなキャラもだんだんかわいく見えてくるのがすごい。ただドラマ性は相当希薄。キャスティングはかなりいいのだけど、それぞれの役者の存在感だけに頼りきっている感じで、個々のキャラに対する共感以上のものは何もない。加えて秋代のキャラがやや弱く里子との関係性も薄いため、ちひろと塔子のコンビとアンバランスで、そのためラストもいかにもとってつけたような感じになってしまっていると思う。映画としては4点くらいだが、池脇千鶴萌えってことでプラス1点。
(5点) ★★★★★
4人の女の子の群像劇で、他にも類似作品が多くある中で、本作が抽んでているのは、間違いなくセックス描写だろう。生々しい。出ている役者もいつもと違う自然な表情をしていて、なかなかリアルである。しかしその一方で、作為的な演出がかなり目立つ。例えば塔子が出版社前で倒れる場面、わざわざ看板の絵に合わせて倒れる。他にも凝ったカットやつなぎがあって、巧いことは巧いのだが、そのぶん映画が作り物っぽくなっている。 ストーリー的にも悪い男(加瀬亮)がステロタイプなのはいただけないし、池脇だけ他の娘たちとトーンが違っていて、最後まで傍観者的立場なのもバランスが悪い。リアルの規準を定めなかったのがこの映画の敗因である。
(5点) ★★★★★
映画用にほぼ作り起こされた池脇千鶴パートと、原作を踏襲した他の3人のパートできっぱりと明暗が分かれた作品。恋愛至上主義の不毛さを身にしみながらも、やっぱり恋愛したくてたまらない池脇のキャラ造形はリアルで魅力的だが、原作の設定を引きずった他の3人に関しては自傷的な売春、拒食症、結婚亡者といずれも類型的で、古い。冒頭とラストのカットなど、演出的には気の利いたいいシーンがたくさんあるが、全体としてはちぐはぐで散漫な印象をぬぐえない。4人の絡みが弱く、ラスト近くの全員集合がかなり不自然に移るのもマイナス。力のあるスタッフには違いないので、次回作に期待といったところか。
(5点) ★★★★★]]>
攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society
http://wakusei2.exblog.jp/4562935/
2006-11-17T00:37:00+09:00
2006-11-17T09:36:23+09:00
2006-11-17T00:37:36+09:00
wakusei2ndnews
未分類
あの「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズの最新作はなんと100分の長編!
映画並みの長尺でIG若手スタッフが挑んだ「SSS」を徹底レビューしました!
押井監督の「攻殻機動隊」って、絵はきれいですけれどお話がなんだか難しくてとっときにくいところがありますよね。その点、この 「STAND ALONE COMPLEX」シリーズは、映画よりはずっとわかりやすいし、それになんだか出てくるキャラクターが人間っぽくて安心して見れます。お話はハードで考えさせられるものが多くて、このスペシャルも、今の安倍政権の右翼っぽいところとかについて、真剣に取り組まなきゃいけないのかなあ、って思いました。みんなこのアニメを見て、選挙のときは本当にいい政治家を選んでほしいですね! 最後は、素子とバトーがちゃんと再会できてよかったです。
(9点) ★★★★★ ★★★★
前作『2nd GiG』はどうも煮え切らないというか、『攻殻』の嫌らしい部分ばかりが目に付いていまひとつだったが、今回は秀作と言っていい。序盤から中盤にかけて密度の高い脚本でナルシズムの払拭に成功している。特に成長したトグサとやさぐれたバトーの関係の機微は秀逸。ネット社会への批評性も(一作目には及ばないものの)かなりイイところを突いている。しかし、トグサが主人公の間はビンビンに感じられていた緊張感が、素子が合流した途端に緩むのは気になるところ。草薙・茅葺といった女ボスに去勢されたマッチョ達という構図は、原作の戦闘美少女的な要素を忠実に継承しており、今になって押井攻殻の射程の深さを浮き彫りにしているような気がしないでもない。
(7点) ★★★★★ ★★
タチコマ達レギュラーメカよりタイアップの日産製未来コンセプトカーが目立ってたと感じたのは気のせいでしょうか。内容は2時間弱でうまい事まとまっていた…と言いたいのですが、クライマックスのアクションシーン以降の「いかにも現代の世相を反映しました!」な政権批判っぽい演説が退屈でした。なにもそこだけ全部台詞にしなくたって…。今思うと本拠地が都庁っぽいし…。でも逆に言うと、そこまでは、そこまでは非常にすばらしかったです。まあそれらもラストの素子さんの半ケツっぷりに比べたら些細な事なんですけど。ハイレグならまだしも、なんですかアレは。広大なのはネットじゃないですよ。ほんとに。
(6点) ★★★★★ ★
一生懸命勉強して退屈させない脚本を書いているのは認めるけど、ハッキリ言ってスタッフの問題意識と理解は社会派中学生レベル。このレベルのメッセージなら間違いなく入れないほうがいい(笑)。老人団体の動機も詰めが甘いのだが、特にラストに安倍シンゾーソックリの政治家が出てきて批判されるくだりは「陳腐ここに極まれり」といった感じ。いや、別に安倍もネオリベも嫌いだけど、さすがにこういうクサしで何かを考えた気になるのはバカだし、何より作品にとってプラスにならない(むしろ足を引っ張っている)。無駄に背伸びして高尚なテーマに手を出しているところが目立つ作品だが、全体的には佳作。高密度のアクションと謎解きを堪能する分にはオススメです。
(5点) ★★★★★
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ひと夏の経験値
http://wakusei2.exblog.jp/4477443/
2006-11-03T11:10:00+09:00
2006-11-05T11:57:47+09:00
2006-11-03T11:10:06+09:00
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novel
舞台は90年代前半。テーブルトークRPGに耽溺するオタク高校生軍団の前に現れた一人の美少女!
ファンタジー世界に現実逃避を続ける少年たちのハートが鷲づかみにされたそのとき、彼等の中で「何か」が変わり始める……。
TRPG誌「ロール&ロール」に連載され、賛否両論を呼んだ傑作サークルクラッシュ(未満)小説をレビューします!
とにかく懐かしい~。私も高校のころは友達に誘われて、テーブルトークRPGにハマっていました。他はみんなオトコノコばっかりだったけど、みんな私に優しくしてくれて、とっても楽しかった想い出があります。でも、この本に書いてあることが本当だとすると、もししかたらあの頃一緒に遊んでいたオトコノコって、私のこと好きだったのかもしれない……とか思っちゃいました。でも、誰も告白してくれなかったのはどうしてなんだろう。告白されたらされたで、ちょっと困っちゃったと思うんですけどね。あー、私もまた、ちやほやされたいなあ。
(9点) ★★★★★ ★★★★
恋愛に対して臆病で不器用な「草食動物」な少年たちの青春物語。こっぱずかしくてカッコ悪い青春だからこその楽しさが嫌味なく描かれていてけっこう胸キュン。ただオチがちょっとヌルいよなあ。多少苦い結末であった方が、その不毛な輝かしさがより際立ったのではないかと思う。あと、現実の自分の行動に対してはあれほど自覚的な主人公が、ゲームマスターとしての自分の心理にはなぜあれほど無自覚なのかが疑問。そこをもう少し突っ込んでいれば、90年代初頭のTRPGシーンという舞台設定にも、ノスタルジー以上の意味を持たせられたのではないだろうか。
(4点) ★★★★
90年代前半が舞台のテーブルトークRPGサークルに所属する高校生の青春譚。男ばっかりでゲームやってたトコにかわいい女の子が参加することでっていう展開なんだけど、当初予想していた方にはあまり行かず思ったよりいい話で最後はちょっと拍子抜けしたけど青春モノとして秀作。スポーツをする同級生の男子生徒を見て、俺達だって青春してるんだって突っ張るトコは『さくらの唄』を思い出した。主人公の男の子には共感したけど、あれは悪い方に転がる可能性の方がデカイんだよなぁ。あとは一人の男の子が脱オタする展開が泣けた。思春期の男の子の痛くてかわいい部分が刻みこまれた作品だと思う。
(7点) ★★★★★ ★★
テーブルトークRPGの類はまったく興味が沸かず、一度も経験していない私でも十二分に楽しめたのは、やはりサークルクラッシャー小説としての完成度の高さだろう。「いい人」であるが故にオタクの遊びにつきあってあげる女子の善意が、ピュアな童貞男子たちをドキマキさせる過程の描写が素晴らしい。脱オタに走る人間への僻み根性や、「告白」なんて思いもよらないウブさ加減といい、あざとい戯画化が空回りがちだった『ヨイコノミライ』よりも、本作の方がぐっとリアルで深く、しかも愛情に溢れている。この世に不器用な童貞男子よりカワイイものはないのだ! ただ、もう少し悪意があればぐっと面白くなったはずで、そこが残念ではある。モテない恨みをネット恋愛論パフォーマンスにぶつけているタイプの人にもオススメ。
(6点) ★★★★★ ★
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LOFT ロフト
http://wakusei2.exblog.jp/4439105/
2006-10-28T14:33:29+09:00
2006-10-28T14:26:44+09:00
2006-10-28T14:26:44+09:00
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movie
黒沢清が、『ドッペルゲンガー』以来3年ぶりに手がけたサスペンス・ホラー。新作執筆のため引っ越した郊外で中谷美紀演じるヒロインが、ミイラを研究する男(トヨエツ)と出会ったことから悪夢のような日々を過ごす。
トヨエツさんと中谷美紀さんの大ファンなので楽しみに観に行ったのですけど……なんだかよくわかりませんでした。あんまり難しいお話じゃなかったと思うので、私がちゃんとお話をおいかけられなかったのかもしれませんけど……でもきっと、色んな人が褒めているので、ものすごく深い意味が隠されているんでしょうね! お目当ての二人は相変わらず素敵だったですけど、一番印象に残ったのは安達祐美ちゃん。この娘って美人じゃないけど(失礼!)本当に演技力があると思います。西島クンも怖かったことは怖かったですけど、西島クンにだったら殺されてもいいなあ、なんて思っちゃうダメな私がいますー。
(7点) ★★★★★ ★★
「永遠の美」を体現するミイラ、微速度撮影で撮られたミイラの監視フィルム、同じく、コマ落としの編集。二人の作家、作家と編集者、憑依、二つの死体、二度殺された死体などの『ドッペルゲンガー』にも見られる対称・代理・あるいは逆転のイメージ。そしてB級映画っぽい何か示唆的な、それでいて後味の悪い終わり方など、魅力的な場面に満ち溢れている。
演出上の技巧も申し分なく、ホラーとしての魅力はもちろんだが、終盤に至って、豊川と中谷の唐突な抱擁、動き出したミイラ(普通なら絶叫してしまうような山場なのだが)に掴みかかって凄む豊川など、ギャグとしか思えないシーンが頻出する。そのアナーキーともいえる複雑さゆえに単純に面白かったというのも憚られてしまう。
(9点) ★★★★★ ★★★★
サブカル系にやたらウケの良い黒沢清だが、今回も私はさっぱり面白くなかった。理由は物語がわけワカメだったからではない。映画らしさが失われたからだ。元々私は黒沢監督のファンだったのだが、『回路』以降さっぱりダメになったと見ている。原因はおそらくDV撮影(編集)に頼るようになったからである。今回も2台のデジカメを使って、その魅力を嬉々と語っているが、撮る方は面白くても見る方はエッジの甘い、暗い画面を見させられてうんざりだ(たぶんTVモニターで見るとキレイ)。得意だった長回しも使わなくなって、無意味なカット割りが目立つ。批評家はいろいろ面白く話を解釈するだろうが、まず画面の抜けの悪さに気付けよ。
(1点) ★
一部では「黒沢清だから褒めなきゃ」って空気があるみたいだけど、これは庇わない方がいいでしょう(笑)。シネフィルへの目配せばかり目立つ一方で、こういう「不安」や「イライラ」をトラウマ&フラッシュバックみたいなアイテムで表現するという10年前のセンスが本当に辛い(笑)。青山真治と並んで今、相当厳しいところにいる監督だと思う。そして蓮実系の映画批評が、作り手にこういう形で悪影響を与えてしまう時代になったんだなあ、と色んな意味で感慨深い。あと、いくら「そういう映画じゃない」といってももう少し脚本はしっかり取材して書いたほうがいい。出版社と大学の適当な描写はテレビドラマ以下。画面も粗く、「エリエリ……」と並ぶ今年を代表する不良債権映画。安達祐美はまあ、良かった。
(3点) ★★★
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グエムル-漢江の怪物-
http://wakusei2.exblog.jp/4189179/
2006-09-21T21:18:00+09:00
2006-09-22T14:16:49+09:00
2006-09-21T21:18:23+09:00
wakusei2ndnews
movie
「ほえる犬は噛まない」「殺人の追憶」のポン・ジュノ監督が手掛けた異色のモンスター・パニック巨編。韓国では興行記録を次々と塗り替える大ヒットとなり大きな話題を集めた。謎の巨大生物に娘をさらわれた一家が、政府の理解を得られぬまま独力で怪物に立ち向かう。主演は「JSA」「殺人の追憶」のソン・ガンホ、共演に「リンダ リンダ リンダ」のペ・ドゥナ。賛否両論が渦巻く話題作を、惑星開発委員会ペ・ドゥナファンクラブが総力を挙げてレビューします!
とっても変な映画でした。怪物が出てくるシーンも本当にいきなりでびっくりしちゃいましたし、普通の映画だったらみんな泣いちゃうような場面にギャグが入ってきたりして、観ながら「私は今、どんな気分でこの映画を観たらいいんだろう……」とか考えていました。でも後半は家族を助けるためにがんばる兄弟たちの姿にとっても感動しました。最後は泣けちゃいますよね。『リンダリンダリンダ』にも出ていたペ・ドゥナちゃんが可愛かったです。『ガメラ』とか、日本の怪獣映画に比べると、あんまり迫力がないですけど、家族の大切さがよーくわかるいい映画だと思います。変なところに入るギャグも、なんだかんだで嫌いじゃないかも。
★★★★★ ★★★ (8点)
怪獣映画というよりはパニックモノという感じ。前半のグエムルの襲撃の動きや葬式のシーンを見てシリアスなのか? コメディなのか? 戸惑うと映画を楽しむのが難しいかもしれないが、ここは笑い6割として見ると楽しめると思う。監督の政治色の強さ、反権力的なスタンスは好き嫌いわかれるかもしれないが、軍隊やロボットでなく家族総出で怪獣に戦いを挑むってのが極めて韓国映画的で面白い。そして出てる家族のそれぞれに役割がうまく与えられていて盛り上がる部分を外してる部分も含めて、脚本がよくできている。泥臭いもの、生ぐさいものが好きなら楽しめると思う。もちろんペ・ドゥナファンとしても文句はない。傑作!
★★★★★ ★★★★ (9点)
『ほえる犬は噛まない』『殺人の追憶』などの傑作を送り出してきたポン・ジュノ監督の最新作はなんと怪物映画である。
在韓米軍が漢江に捨てた廃液が奇形の巨大怪物魚を生みだしそれが大暴れするというプロットだけ聞けば単なるB級ホラーなのだが、いざ本編を見てみるとポン監督の今の韓国に対する風刺や悪意がいたるところに塗り込められている。韓国には、今でこそ韓流スターがどうのこうのと騒いでいるが、それ以前は市井の弱者を通して国や権力者を批判するというような気骨のある映画が多くあり、この作品もその流れを汲むものだといえる。実際、娘が少年に「もうすぐお姉ちゃんが警察や軍隊やお医者さんを呼んでここに戻ってくるからね」というセリフには泣けた。本来はこのように弱い者の頼りにされるべき存在が、この映画の中ではことごとく裏切って描かれていたからである。
ソン・ガンホを始め、役者陣はいずれも魅力的だし、ハリウッドのスタッフによる怪物のCGもよく出来ている(その生態もリアルである)。居眠りしてコインが顔にくっつく描写から始まり、スルメの足のやりとりやバカなのに「ノー・ウィルス」の英語だけわかるところなど、この監督独特の細かいユーモアも充実している。表層においても、裏読みするにしても、語り尽くせないぐらいの魅力がこの作品にはある。
★★★★★ ★★★★★ (10点)
序盤のパニックシーンから病院脱走までが素晴らしい! いい意味でデタラメで、パンチ力のある怪物の出現シーン。絶妙な間合いで挿入される不謹慎な笑いの連発。『ほえる犬は噛まない』ではやや外し気味だったホン・ジュノ一流の乾いた笑いが今回は見事にハマっている。B級バカ映画に慣れていない人は楽しみ方に戸惑うかもしれないが、本格怪獣映画を謳った宣伝を気にしないで観に行けばほぼ間違いなく頭を空っぽにして楽しめるだろう。変化球の捕球が苦手な人には敷居が高いが、今年もっとも楽しめた映画のひとつ。ペ・ドゥナはもちろんのこと、ソン・ガンホのダメオヤジっぷりがたまらなく愛おしい。難点を挙げるなら終盤のハーフビターな展開か。最後まで明るいバカ映画に徹していた方が、今回の狙っている微妙な笑いのテイストが生きたはず。
★★★★★ ★★★ (8点)
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少女七竈と七人の可愛そうな大人
http://wakusei2.exblog.jp/3837167/
2006-07-18T23:32:00+09:00
2006-07-18T23:38:48+09:00
2006-07-18T23:32:42+09:00
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novel
淫乱な母親を持ったがために、数奇な運命に翻弄される少女・七竈。ライトノベル界の林真理子にしてお姫様・桜庭一樹がリリカルかつファンタジックな文体で贈る話題の新作をレビューします。
もしかしてこの兄妹(姉弟?)って、いけないことしちゃうのかも……と思って、ドキドキしながらページをめくっていたのですけど、普通に(そして綺麗に)終わっていって安心しました。最初から色んな男の人と関係を持つ女の人の話から入っていったので、七竈ちゃんの未来を心配していたのですけど、考えすぎだったみたいです。それにしても、大人になるって何かを失うことなんですね。うう、悲しい……。でも、この小説はそんな悲しさの中に宿る美しさがとっても素敵な小説です! う~ん、これが文学って感じですか? なんかウットリしちゃいます。まだ若いのにこんな小説書いちゃうなんて、桜庭一樹さんってすごいんですねぇ。
★★★★★ ★★★★ (9点)
少女で半身としての少年で女の性で報われない悲恋で成長物語で感傷的でエセ古風な少女小説風の文体で、とまあ、目立って言及されやすい点を列挙すると、毎回とは言えそのあざとさにうんざりする。幼年時代の比喩としての鉄道模型なんかも分り易すぎ。ただし、個々の要素を取り上げて着目すると詰まらないのだけど、シンプルな成長物語の構図の周囲に「可愛そうな」大人たちを配し、書割めいたミニマルな文体で人形劇の様にキッチュに仕立てた雰囲気で、作品総体としては器用にまとまっている。先輩後輩の掛け合いや、いんらんの母とビショップの乾いた語りも良い味を出してて小説として楽しい。作家として成熟した桜庭一樹が窺える作品。
★★★★★ ★★ (7点)
序章の「辻斬りのように」を「野生時代」で読んだときは、これでは、本人の過去の著作の焼き直しというかその続きが読みたいだけではないか、と怒りを覚えた。ただ、単行本で読むと、桜庭が一貫して追い続ける、「少女と少女を取り巻くセカイ」というテーマは不変だし、いちいち視点を少しづつズらして行く描写はさすがに巧みなので、なるほど、それなりの読後感は残るように出来ている。桜庭という作家の初物買いにはうってつけかも知れぬ。しかし、本人のキャラの問題なのか、世間との接触を極力抑えようとする少女の純血主義ぶりがまだ少し鼻につく。少女・七竈が母と同じ道をたどる過程を描けるかが作家・桜庭一樹の分岐点のような気がする。
★★★★★ ★ (6点)
『ブルースカイ』が「昔の日本SF+5年前に流行ったセカイ系気分」なら今回は「古風な少女小説の装いで小奇麗にまとめました」って感じ。「なんだって勉強すれば器用に書けますよ」という自己主張をしたがる所といい、実際にそれができてしまう所といい、一般文芸に本格進出すれば姫野カオルコより早く林真理子になれるかもしれない(笑)。それは同時に内容が簡単に因数分解できてしまうつまらなさがあるということでもある。そして、現時点での桜庭の市場はこのような因数分解をありがたがるヌルい場所だということなのだろう。作者の器用さが得がたいものであることは間違いないのだが、「ライトノベルからの背伸び組」のために設計されたことが丸わかりの「あざとさ」「安っぽさ」はどうしても弱点になってしまう。
★★★★★ (5点)]]>
涼宮ハルヒの憂鬱
http://wakusei2.exblog.jp/3816269/
2006-07-15T10:22:55+09:00
2006-07-15T10:22:55+09:00
2006-07-15T10:22:55+09:00
wakusei2ndnews
others
原作は角川スニーカー文庫の人気ライトノベル。京都アニメーションの高い作画力などで、2006年春期のTVアニメで断トツの話題作となったアニメ版「ハルヒ」を取り上げます。
第1話がなんかいきなり番外編からはじまってびっくりしましたけど、これって原作のお話がバラバラの順番で放映されたんですね。少し戸惑っちゃいましたけど、こんな楽しいアニメは久しぶりでした。文化祭での映画作りとライブ。夏休みの合宿。日曜日の草野球大会……。やっぱり青春っていいですよね! でも私、あんまり高校の頃は友達いなかったから、こういうのってちょっと羨ましいです。だからきっと、いい歳をしてアニメが大好きなんですね、楽しいからいいけど。個人的にはハルヒがなんだかんだで「キョンさえいてくれれば」って思っているところがいじらしくて好きです。
★★★★★ ★★★★★ (10点)
「日常にすがるくせに非日常を求める(逆もあり)」という心裡を前提とし、枠組みを守りつつ好きなことをやるというスタッフ(=SOS団)の姿勢はなるほど、巷でささやかれるようにエヴァっぽい。ただしエヴァと大きく違うのは物語の視点が常に個人であり、大きな舞台装置を必要としていない点だ。これが時代の気分なんだなと思う。ただ、切り取ったパーツだけ見ても面白いという原作のスタイルまでもを踏襲したスタッフの力量は素直に評価すべきだし、原作が特殊なので比較が可能かどうかは不明だが、ラノベ原作のアニメだってやり方次第でヒットできるのだという事を示した功績も称えられていい。食わず嫌いはもったいない、ある意味怪作。
★★★★★ ★★★ (8点)
〈ビューティフルドリーマー〉のファンが書いたギャルゲー風小説を〈エヴァンゲリオン〉のファンがアニメ化した、という感じ。それが幸いしたのか、原作で鼻についたSF・ミステリ書評系サイト的な「加齢臭」は軽減されていて、いかにも現代風の装い。もっとも、中身の精神性は約20年前、SFファンから絶賛されていた頃の竹本泉あたりと変わっておらず、見かけほどに新しくはない。むしろ、その安心感で売れているんだろうけど、当時の幼稚な少女漫画趣味を引きずったSFファンや、30代にさしかかった「遅れてきたおたく」が感性の若さを強調する道具としては最適の物件で、だからこそアニメ化で「発見されて」大ブレイクしたんだろうね。
★★★★★ ★★★ (8点)
素直に「青春がしたい」と言えないオトコノコが、クドクド見苦しい(そして微笑ましい)言い訳をしながら不思議ちゃんを消費する物語。オタク男子のプライドを守ってあげつつ、弱点を突いてゆくクレバーな原作にはある意味感心していたのだけど、このアニメ版は別の意味で大したもの。原作のメタフィクショナルな側面をうまく強調した構成、映画的な手法を駆使した凝った演出、嫌味にならない程度に散りばめられたパロディと、力のあるスタッフの適度な自己主張が噛み合った完成度の高さは認めざるを得ないでしょう。この10年アレなオタク男子たちの心の拠り所となっていた「メタ萌えもの」の終着点でもあり、限界を露呈した作品でもある。詳しくは近日UP予定の座談会で。
★★★★★ ★★ (7点)]]>
デスノート(前編)
http://wakusei2.exblog.jp/3798136/
2006-07-12T02:05:00+09:00
2006-07-12T02:05:44+09:00
2006-07-12T02:05:21+09:00
wakusei2ndnews
movie
「週刊少年ジャンプ」での連載スタートと同時に、その衝撃的な内容と独自の世界が話題を呼び、圧倒的な人気を巻き起こした大ベストセラー・コミック「DEATH NOTE」(作・大場つぐみ 画・小畑健)が、ついに実写映画化!。
金子修介を監督に据え6月前編・1月後編、異例の2作品連続公開となる本作。まずはその前編をレビューします!
私って、この原作の漫画、面白いけれどなんかキャラに入り込めなかったんです。でも、大好きな藤原竜也君が出るので観に行きました。やっぱりこんな風に簡単に人が死んでいく作品って、人間の命を大切にできていない気がして嫌な気分になったけれど、面白いことは面白いんですよね……。観ている間はそんなこと気にならないくらいドキドキしていたし、月とLくんがはじめて出会うシーンなんかゾクゾクしちゃいましたし。個人的にはリュークの声が中村獅童さんだというのがビックリでした! 悔しいけれどめいいっぱい楽しんじゃったかも。私もデスノートの悪の魅力にハマっちゃっているのかもしれません~。
★★★★★ ★★★★ (9点)
映画として見るなら金子修介の作品の中では劣るけど、原作モノのの映像化という意味では無難な出来。冒頭に次々犯罪者が死んでくのはテンションが上がる。その後の展開は冗長だしキラ思想に対して月と秋野が議論してるくだりは見てられないけど、後半の美空ナオミの話からラストまでのオリジナルの流れは面白かった。特にLと月が対面するシーンはカッコいい。ただ全体的にチープさが露呈していて逆に漫画がいかにうまく誤魔化していたのかを感じた。例えば伊藤和典が脚本を書いたら、もっと重厚な感じに仕上がったんだろうけど、それは多分全然別モノなんだろうなぁ。ミサの出番が少ないのも不満だけど、それも含めて後編に期待。
★★★★★ (5点)
Vシネ風味の演出と呪怨メイクのLたんが最高でした。う~ん、「おもしろい/つまらない」の二元論で言えば肩肘張らずに楽しめて、無難におもしろいんだけど、原作の緊迫感もなければ過剰な内面描写や登場人物の百面相もなく、実写風景も原作の緻密な背景描写よりも劣ってる感じ。再現できているのはLの人間離れした奇怪な動きくらいなもので、逆に漫画原作の凄さを再確認することに。この際、再現性なんて無視して原作とは逆ベクトルにはっちゃけても良かったんじゃないでしょうか? 全編、ジャニタレ出演のミュージカルにしちゃうとか、テニスバトルや紅白歌合戦みたく本編とは無関係な場面ばかり盛り込んで遊ぶとか……酔っ払いオヤジの後出しジャンケンみたいないちゃもんで申し訳ないけど。ファンなら楽しめるのか、逆にファンにはキツいのか、正直微妙なところ。
★★★★ (4点)
キャスト表を観た瞬間、いろんな意味で笑ってしまったこの映画版。蓋を開けてみれば(よくも悪くも)最近の金子修介らしい無難なつくりでそれなりに楽しめた。マニアは褒めづらいだろうけど、とりあえず入る小屋に迷ったらこれを観ておいて損はしないくらいの出来ではある。要するにこれって「ジャンプでも『NANA』みたいな当て方ができるはず!」という目算でやっているマーケティング主導の作品なんだけど、その使命は十二分に果たせるんじゃないだろうか。キャスト表を見て笑ったのは、『NANA』のときと同じコスプレ感を覚えたからに他ならないわけで、独立した映画としてはそこそこの、メディアミックス作品としてはかなりの評価を与えてもいい作品でしょう。
★★★★★ ★ (6点)
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嫌われ松子の一生
http://wakusei2.exblog.jp/3696094/
2006-06-25T04:16:00+09:00
2006-06-28T13:42:51+09:00
2006-06-25T04:16:35+09:00
wakusei2ndnews
movie
『下妻物語』の中島哲也監督待望の最新作がついに登場!
山田宗樹の同名原作をミュージカル風にアレンジ。「耐える昭和の女」の転落劇をコミカルに描く話題の映画を取り上げます。
こんなに悲しいお話なのに、観終わったあとになぜか心が洗われるような気分になっていました。帰り道では思わず映画の中のミュージカルの歌を口ずさんじゃいました! こってりとした味わいの映画なのに後味がさわやかなのがすごいです。この後に引かない口当たりのよさって、絶妙ですよね。監督とケンカしながらがんばった中谷美紀さんの好演に拍手ですね。本当に不思議な映画でした。それにしても『下妻物語』のときはほとんど映画館に人がいなかったのに、『松子』はCMもいっぱい流れるし、『ニュース23』では監督と筑紫さんが対談しちゃうし、扱いがすごいですねー。
(9点)★★★★★ ★★★★
前作『下妻物語』で古くさい熱血友情モノの味をカラフルなCGで現代に甦らせた中島監督だが、今回は昔の日本映画が得意とした一人の女のお涙転落劇を同様の手法で見事に復活させた。やや滑りがちな小ネタとケバケバなCGで誤解されがちだが、この監督は映画というものをよくわかっていて、泣かせ所のカメラワークや役者の見せ方に狂いがない。ミュージカル演出にしても本家アメリカの『シカゴ』や『プロデューサーズ』なんかより遙かに本物らしい躍動と情緒がある。劇中の「今度こそ死んだと思った。でも次の瞬間には歌っていた」という台詞どおり、最後まで前向きだった松子の一生に素直に感動できた。助演では黒沢あすかが良かった。
(10点) ★★★★★ ★★★★★
中島監督の前作『下妻物語』や『木更津キャッツアイ』で描かれた、「空虚なこの時代に生きるボクたちには、確かなものなんて何もない。でもだからって90年代みたいに自閉せず、身の回りのファストでジャンクな現実から生き甲斐をやりくりし、カラッと笑い飛ばしながらシブトク生きよう!」という惑星開発委員会好みの00年代的テーマを、テンポよい映像技術と演出で「昭和」のバイタリティを圧縮・戯画化することで高度に普遍化・結晶化した到達点。……なのだが、00年代も折り返しを過ぎた今、そのコミカルなモードが、ステージの低い「だめ萌え」の域を越えていないのではないかという嫌疑もまた拭えず。ラストの取ってつけたような、あの世での妹との和解というヌルい救済は、少なくとも不要だった。
(6点)★★★★★ ★
ベタベタの泣かせ話である原作を中島『下妻』演出でミュージカルに、というアイデアの勝利。こんな話をよくもまあ喉越しよく見せたものだなと素直に感心する。ちゃんとサントラが欲しくなるのもミュージカルとしては大事なこと。ただ、前作と比べた場合、原作の力の強弱がそのまま作品のインパクトを左右してしまった感は否めない。たぶん、この映画を観た人のたほとんどが「面白かった」「笑えた」「泣けた」と言うだろうが半年後に目を輝かせて「この映画が好き!」と語る人はまずいないだろう。TBSの隙のない(そしてあざとい)プロモーションも含めて、完成度の高いサプリメントを食べているような気分になる。間違いなく今年観た映画の中では1、2を争う出来なのだけど。
(7点)★★★★★ ★★]]>
メカビ
http://wakusei2.exblog.jp/3683806/
2006-06-23T01:24:45+09:00
2006-06-23T01:24:45+09:00
2006-06-23T01:24:45+09:00
wakusei2ndnews
others
講談社の「オタク雑誌」がついに始動! 『電波男』の本田透を擁したその雑誌の名は「メカと美少女」……略して「メカビ」!
「男はみんなオタクである」という挑発的なコピーで登場した創刊号を、徹底レビューします。
私、本田透さんって、可哀相な人だと思うんです。本当は三次元の恋人が欲しいし、自分が言っていることがおかしいって心の底では気付いていると思うんです。なのになんか恥ずかしくなって今更「彼女が欲しい」って言えなくなっているような気がします。この雑誌を読んで、本当は「メカと美少女」以外のものが欲しい人たちが素直になれないで作ったんだなあ、と思いました。ごめんなさい。個人的には『ディスコミュニケーション』の植芝先生や『R.O.D』の倉田先生のインタビューがすごく面白かったです。なんだか嫌な感じのする雑誌だけど2号が出たらまた読んじゃうと思います。
(7点) ★★★★★ ★★
アカデミック系の記事が物足りないし、引用の仕方が乱暴だなあと思う部分がある。せっかく筑摩書房がスポンサーなのに、どうしてどの評論にも参考文献がないの? 明示的には書いてないけど、本田透のモトネタが八〇年代の教養ブームにあるんだなあと思った。ポトラッチとかの人類学ネタは栗本慎一郎で、一神教や多神教の話が中沢新一あたり。近代と中世を図式的に説明するのは『構造と力』で、学生運動から恋愛へというのが上野千鶴子。そして人間は共同幻想の中でしか生きられないんだというのがまさしく岸田秀。本田透は学生時代に読んでたんだろうなあと思うけれど、読者はモトネタのモトネタも読んでおかないと、モトネタの恣意的な解釈に騙されるよ、って危惧を感じる。クリエイターへのインタビュー系は、落ち着いて読めて良い。
(5点) ★★★★★
オタクの財布に目をつけたオヤジと権威による箔付けを求めた萌えオタクががっつり手を組んだ結果生まれた雑誌。つーか『批評アフタヌーン』って感じ。思惑が噛みあってるようで噛みあってない所が素晴らしい。萌えオタク的な美意識の露出を極力隠し知的な印象を与えていてオタクの歪んだ性癖から来るエロキモ度が足りない。簡単に言うと『げんしけん』的。あと本田透が電波男で振り上げた拳を何とか軟着陸させようとしてるなぁと思った。それにしてもアフタヌーンネタ多すぎ。まぁ植芝理一先生のインタビューが読めたのは嬉しいけど。次は鬼頭莫宏先生お願いします。
(5点) ★★★★★
天下の講談社でよくもこんな企画が通ったものだなと驚愕。濃い記事をたっぷりと読ませる希少なメディアとしてがんばって欲しい。が、雑誌のカラーが本田透系一色なのはあまりに勿体ない。オタク文化のポデンシャルって、それだけで括れるものではないでしょ? 「メカと美少女」というけれど、みんな本当にそれだけで満足できる? こういう場ができたこと自体は面白いと思うけど、もう少し色々な立場の書き手を集めてバラエティに富んだ誌面にしないとせっかくの場を生かしきれない。うまく転がればかなり面白い本になるはずなのだけど。まずはきちんとレールに乗せられるかどうかが勝負でしょう。
(5点) ★★★★★
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