2005年 10月 09日 ( 1 )

長い道


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04年、傑作原爆もの『夕凪の街、櫻の国』が「安心して泣ける泣きサプリメント」としてヒット、その地味ながらも地に足の着いた作風で高い評価を受けたこうの史代の待望の新刊。双葉社「素敵な主婦たち」に01年から04年まで連載されたものに、同人誌等で発表されたエピソードを追加した単行本。典型的な「だめんず」宗介と、そんな宗介のもとに親同士の約束でやって来た押しかけ女房・道の何気ない日常を描くハートフルコメディ。



e0076213_3535416.gif なんか他人事のように思えませんでした。私も高校の頃、ちょっと好きだったアニメ研究会で一緒だったオトコノコのことを「○○どの」とか呼んでいました。お道ちゃんと宗介どのって、やっぱりお似合いのカップルですよね。道ちゃんが田舎から出てきたのって、竹林どののことを忘れられなかったからだとなんですけど、ずっと宗介どのと一緒にくらしているうちに、「偽者の恋」は本物になっていったんだと思います。特に大きな事件があったりするわけでもなくて、何気ないできごとがいくつも重なって、だんだんとふたりが近いづいていくところが好きです。
★★★★★ ★★★★★(10点)


e0076213_354886.gif こうの史代の描く日常は豊かで奥深い。貧乏な二人のささやかな日常は笑いに満ちている。でも、時々底に沈んだ今まで押し殺してきた何かが吹き上がる瞬間がある。それが「夕凪の街 桜の国」では被爆体験という形で描かれ、本作では失恋という形で、その記憶が溢れ出す。夕凪~が少し不幸な受け方をしたのは、その吹き上がりにのみ注目が行ってしまったからだが、本作を読むと、こうの史代がそれも受け入れた日常の深遠に視線があることが理解できる。不覚にもこんな日常を送りたい、こんなお嫁さんが欲 いと思ってしまった。 ……まぁリアルに居たら大変なんだろうけどね。
★★★★★ ★★★ (8点)


e0076213_3584199.gif 一言で言うと押しかけ女房話……って、これ『ああっ、女神さまっ』とどう違うんですか……? と茶化すと色々怒られそうだけど。冗談はともかく、「終わらない日常」と天然ボケで「いいひと」な女の子に癒されて動物化するヲタから、『夕凪の街 桜の国』に「感動」にしてしまった一般の読者まで、広い範囲に届く性質を持った作品であるのは確か。また作品そのものも、漫画として非常に優れている。柔らかく細かいタッチの絵は漫画を読む快楽を掻き立てられるし、「偽物の恋」が細かな日常を積み重ねる中で、逆説的に「本物の恋」に変化する言う仕掛けを丁寧に描ききる力は驚嘆に値すると思う。普通にオススメな作品です。
★★★★★ ★ (6点)


e0076213_359511.gif 不思議ちゃん開花済みの非モテ地味女子が、「だめんず」に引っかかって小さな幸福(妥協カップル)を見つける話。基本は貧乏ネタで笑わせるコメディなのだが、ハートフルに終りそうになると脱力ギャグで冷ます2段オチのテクニックと、いつのまにかヤっちゃってなし崩し的に関係が出来ていく微妙なリアリティが絶妙。作品の根底をなす地味女子のいじけた幸福感がたまらなく愛しい反面、不思議ちゃんヒロインが一瞬だけ素に戻って見せる暗い情念、女の業に心底ゾッとさせられる。ネタ勝ち、企画勝ちだった『夕凪の街 桜の国』よりも、漫画としてはこちらの方がすごい。
★★★★★ ★★★ (8点)
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by wakusei2ndnews | 2005-10-09 04:00 | comic