2006年 05月 22日 ( 1 )

永遠のフローズンチョコレート


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 (『多重人格探偵サイコ』を真に受けたような)連続殺人を続けるヒロインと、無気力で厭世的な(のがカッコイイと思っている)ボーイフレンド基樹。ふたりの無駄に気取った倦怠期に不死身の体を持つ少女・美和が現れて……。「えんため大賞」受賞作家、扇智史が思い入れたっぷりに語る話題作『永遠のフローズンチョコレート』を徹底レビューします!


e0076213_22303568.gif「あたしたちが何を望んでも――世界は世界の都合でしか動かない」……うまく言えないけれど、私たちの90年代ってずっとこんな感じの気分でした。とにかく世の中が絶望的に思えて、でもそれが巧く表現できなくて、苦笑するしかなかったんです。あれから10年、なんだか今の世の中は雑閥としているというか、割り切りすぎている感じがしますよね。でも、本当に人の痛みがわかるのは、この小説に共感できる特別に繊細な人なんだと思います。あの頃に青春を送った人にだけわかる、私たちの世代の宝物みたいな作品ですね。とにかく懐かしいです。それにしてもあの頃、私ってなんであんなに絶望してたのかなあ。
★★★★★ ★★★★★ (10点)


e0076213_22273742.gif  非常に評価の難しい作品。なぜ理保は人を殺すのか、その自明とされている動機やら不安やら危機やらが(90年代ならいざ知らず)現在では見えにくい。彼女は内面の言語化を拒み「気分」を強調するが、それを今の読者が共有するのは難しいだろう。しかし、実和という漫画・アニメ的な「虚構」を虐殺し、「いつの日にか不死人になる」というロマンを冷蔵庫の奥底に保留しながら、破滅へと続く日常に回帰するストイシズムは、虚構に溺れる凡百のラノベとは一線を画す。ここで描かれているのは「酒鬼薔薇聖斗」になることを拒絶した殺人鬼の青春だ(もっともそれにリアリティがあるかは別問題だが)。もうひとつの難点は、読んでいてひどく退屈なところ。まるで文藝あたりに載ってるブンガクのように。
★★★★★ ★ (6点)


e0076213_22285360.gif 「世の中なんてくだらない」とか言いつつ、一丁前に「寂しさ」だけは主張するという、イマドキの青春小説。しかも主人公の女子高生はお約束のメンヘル。こーゆーのを読むと生きる力が減ってる奴が増えてきてるんだなと思う。気持ちは分かるけど、「だから?」という読後感しか残らないのが致命的。それなりの終り方ではあるけれども、存在理由を「あそこ」に求めてるラストも弱い。「私は不幸」ということを再確認したい人たち、もしくは「不幸」であることを肯定されたい人たちのための小説なんだろうけど、そこから生まれるものはより強大な不幸でしかないことに気がつかないと。技巧の話をすれば、文体は平坦で特筆すべきものはなし。ありきたりの設定と会話の連続は正直言えば精読に耐えない。「桜庭一樹すら難しくて読めない」人が読めばいいのでは。
★★★ (3点)


e0076213_22291422.gif「終わりなき日常」のキツさを「僕らはこんな世界のつまらなさ(絶望)を知っているんだよ」という「乾いた暗さ」で表明することでウットリとナルシシズムに浸って回避……。これが90年代末に「頭が悪いけどなんとかカッコつけたい層」に一番流行ったキャラ売りで、本作もまたそんな「気分」をほぼ的確に捉えている時代遅れ作品。3年前にファウストに書きたかったんだろうけどね(笑)。本作に共感できる=頭の中身がまだ90年代のアレな人ってことなのでリトマス試験紙としては極めて有効。こういう絶望ゴッコで震えられている人は、一生絶望も希望も関係ないので安心して生きてください。陳腐さに自覚的な分、谷川流の方が問題理解も深く、こういった「キブン」を逆手に取って巧く娯楽作の構築に生かしているのがよくわかる。
★★★ (3点)
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by wakusei2ndnews | 2006-05-22 22:29 | novel