カテゴリ:comic( 4 )

ソラニン

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 大学は出たけれど……状態のモラトリアム主人公たち。趣味のバンドは泣かず飛ばず。でも諦めて就職する覚悟もない。できることと言えば、青臭い文句を繰り返すことだけ……。
『ひかりのまち』で「マンガ読み」の熱い支持を受ける一方で、その小学館的な隙のないあざとさにアンチも多い浅倉いにお。先日、最終第2巻が発売された『ソラニン』を徹底レビューします。


e0076213_1494683.gif もう2巻は涙が止まりませんでした。現実ってとっても厳しくて、辛くて、灰色で、代わり映えしない毎日がずっと続いていくのかなあって思っちゃうけど、ギターを片手に思いっきり叫ぶだけで、こんなに世界って豊かになるんですね! やっぱりこんな時代だからこそ、つまらない大人になんかならないで一生懸命夢を追いかけて欲しいです。なんだか昔大好きだった尾崎豊さんのCDをまた聞きたくなっちゃいました。ああ、私も種田君みたいな彼氏が欲しいなあ。インターネットにはなんだか「世の中の大きな流れ」に負けないようにがんばっていそうなことを一生懸命書いているオトコノコたちがたくさんいるから、もしかしたら素敵な出会いがあるかもしれませんね!
(10点) ★★★★★ ★★★★★


e0076213_1491571.gif 前作「ひかりのまち」を読んだ時はうまさや完成度が逆に弱点に見えてしまった。90年代のサブカル系マンガの影響が露骨なのも辛い。その限界を本作では半歩だけ抜け出して普通に読める漫画になってると思う。今までの上から見たようなクールな作風も、20代後半のモラトリアムという作者にとって身近すぎるモチーフなだけに身につまされるし登場人物に感情移入できた。そして2巻以降のライブにいたる流れもちゃんとカタルシスがある。その意味で大きな分岐店になる作品だと思う。でも一番偉いのは芽衣子ちゃんみたいなブサイクスレスレの可愛い子の魅力をちゃんと描けてることだと思う。ソラニンニン。
(5点) ★★★★★


e0076213_149060.gif 登場人物全員、ダメ人間。モラトリアムにも程があるユルい人間関係。バブルを知らない子供たちの、青臭い絶望。巧妙に仕組まれた情動喚起のためのドラマツルギー。鼻につくほど単館上映のオサレ映画テイスト。あらゆるガジェットがリトルモアとか銀杏BOYZの好きなサブカル女子を狙い撃ちすぎて、読んでるこっちが気恥ずかしくなる。正直、こんな不愉快なマンガは大嫌いなんですよ。絵が巧いのもムカつくし、このあざといストーリーをネタではなく素でやってるんだろうなあっていう作者の無防備さにも絶望を禁じ得ない。……にもかかわらず、こぼれ落ちる涙。いやあ、自分がこんなもんで「感動」を消費するほど動物化していたとは気づかなかった。
(8点) ★★★★★ ★★★


e0076213_1483438.gif ありもしない「大きな壁」に拳を振るっているつもりで、実は自分の隣を走る小さな存在の足を引っ張ることしか頭にない……今どきカウンターカルチャーを気取っちゃう人間や、安易な「モラトリアムもの」はすぐにこの罠に陥ってしまう。本作も読み始めたころは、「また『こんな時代だからこそあえてロック』か」と失笑したものだったが、後半のあざとく巧妙な転がし方には素直に感心。これは種田=カウンターカルチャーの死をそれなりに受け止めた上で、愛と訣別を込めて捧ぐささやかな葬送曲に他ならない。まあ、死んだ存在を神棚に祭り上げて、本当に諦めなきゃいけないものから最後の最後で逃げている甘さはあるが、ジャンルの中で頭一つ抜けた佳作であることは間違いない。
(6点) ★★★★★ ★
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by wakusei2ndnews | 2006-06-13 01:49 | comic

アンダーカレント

 
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 婿養子に逃げられた銭湯の女主人の前に現れた、どこか陰のある釜たき男。
 行方不明の夫のことを想いながら、ヒロインは釜たき男と微妙な距離感を保ちながら日常を過ごしていくが……。
 豊田徹也によるアフタヌーン文芸漫画の話題作が登場!
 

e0076213_21425374.gif なんか、昔の映画みたいですよね。下町の人情もの。でも、この漫画の世界ってひんやりとしていてとても不思議な感じがします。かなえさんと堀さんの関係も、なんだか大人同士って感じで憧れちゃいます。私はこういうお話は素直に感動したい方なのでもうちょっとラブラブなやりとりが見たかったかもです。キャラクターでは近所のおじいちゃんが好き。あの探偵さんも好みのタイプじゃないけどいい味が出ていると思います。こういう文学っぽいのも素敵ですけど、次はもう少し楽しくてわかりやすい作品が読みたいです。あと私、あんまりこのかなえさんの気持ちがわかんないかも。
★★★★★ ★★★ (8点)


e0076213_214333100.gif 旦那に失踪された銭湯の女主人を巡る、それぞれにちょっとワケアリ気味な人たちの人間模様。基本的にはメロドラマ=感傷の気持ちよさに酔うための物語であって、憂いに満ちた未亡人(別に旦那死んでないけど)ってやっぱいいよねというだけの話なのだが、大友克洋を思わせる乾いた描線と抑制の効いたダイアログ、そしてものすごくよくできた映画のようなレイアウトとカット割りの上手さによって、メロドラマ特有の黴臭さを感じさせない、むしろコミカルさすら感じされる作品になっている。そのあたりがサブカル漫画スキーにも人気なポイントだろう。話は正直どうでもいいんだが読んでてとにかくキモチイイ漫画。かなえさん萌え。あとサブじいの懐の猫がかわいい。
★★★★★ ★ (6点)


e0076213_2143507.gif ドラマ性の徹底的な排除や小津系の映画を意識しまくったセリフ回しに加え、さびれた銭湯という舞台設定はもう、いかにもアフタヌーンな文芸マンガ。朝日の日曜の書評欄ではおそらく、主人公のトラウマと釜炊きの男の人生がクローズアップされるんだろうけど、そんな簡単に読めるマンガじゃないと思う。物語に弾力を与えているのは誰あろう、主人公の失踪した夫を探す探偵で、何かをわかっているようで実は何も分かっていない思わせる高田純次的軽薄さが素晴らしい。作者のメッセージは最終回のサブじいのセリフに集約されてると読むのがまずは妥当だが、あれだけで分かったつもりになって悦に入っている読者を嘲笑う作者の底意地の悪さに気が付かないとダメ。
★★★★★ ★★★ (8点)


e0076213_2144755.gif さりげない演出が絶妙。無駄にドラマチックなコマ割りでやたらとあざとい演出が好きな人が最近多い中、きちんと地力で勝負して、これだけやれているのがすごい。無駄のあるようでない構成、地味なドラマ展開を支えるしっかりとした描写、二重三重に韜晦する脇役たちがもたらす深み……どれを取ってもすばらしい。俗情に流されず、ストイックに終わらせるのもよく心得ている。それだけにヒロインの幼児期のトラウマにすべてを収斂させるオチはやはり疑問。トラウマなんかない普通の女が、いつの間にかあんな気だるさを身につけてしまっている方がずっと魅力的で深いのに。不満はあるが、世評に違わない佳作であることは確実。
★★★★★ ★★ (7点)
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by wakusei2ndnews | 2005-12-23 21:44 | comic

長い道


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04年、傑作原爆もの『夕凪の街、櫻の国』が「安心して泣ける泣きサプリメント」としてヒット、その地味ながらも地に足の着いた作風で高い評価を受けたこうの史代の待望の新刊。双葉社「素敵な主婦たち」に01年から04年まで連載されたものに、同人誌等で発表されたエピソードを追加した単行本。典型的な「だめんず」宗介と、そんな宗介のもとに親同士の約束でやって来た押しかけ女房・道の何気ない日常を描くハートフルコメディ。



e0076213_3535416.gif なんか他人事のように思えませんでした。私も高校の頃、ちょっと好きだったアニメ研究会で一緒だったオトコノコのことを「○○どの」とか呼んでいました。お道ちゃんと宗介どのって、やっぱりお似合いのカップルですよね。道ちゃんが田舎から出てきたのって、竹林どののことを忘れられなかったからだとなんですけど、ずっと宗介どのと一緒にくらしているうちに、「偽者の恋」は本物になっていったんだと思います。特に大きな事件があったりするわけでもなくて、何気ないできごとがいくつも重なって、だんだんとふたりが近いづいていくところが好きです。
★★★★★ ★★★★★(10点)


e0076213_354886.gif こうの史代の描く日常は豊かで奥深い。貧乏な二人のささやかな日常は笑いに満ちている。でも、時々底に沈んだ今まで押し殺してきた何かが吹き上がる瞬間がある。それが「夕凪の街 桜の国」では被爆体験という形で描かれ、本作では失恋という形で、その記憶が溢れ出す。夕凪~が少し不幸な受け方をしたのは、その吹き上がりにのみ注目が行ってしまったからだが、本作を読むと、こうの史代がそれも受け入れた日常の深遠に視線があることが理解できる。不覚にもこんな日常を送りたい、こんなお嫁さんが欲 いと思ってしまった。 ……まぁリアルに居たら大変なんだろうけどね。
★★★★★ ★★★ (8点)


e0076213_3584199.gif 一言で言うと押しかけ女房話……って、これ『ああっ、女神さまっ』とどう違うんですか……? と茶化すと色々怒られそうだけど。冗談はともかく、「終わらない日常」と天然ボケで「いいひと」な女の子に癒されて動物化するヲタから、『夕凪の街 桜の国』に「感動」にしてしまった一般の読者まで、広い範囲に届く性質を持った作品であるのは確か。また作品そのものも、漫画として非常に優れている。柔らかく細かいタッチの絵は漫画を読む快楽を掻き立てられるし、「偽物の恋」が細かな日常を積み重ねる中で、逆説的に「本物の恋」に変化する言う仕掛けを丁寧に描ききる力は驚嘆に値すると思う。普通にオススメな作品です。
★★★★★ ★ (6点)


e0076213_359511.gif 不思議ちゃん開花済みの非モテ地味女子が、「だめんず」に引っかかって小さな幸福(妥協カップル)を見つける話。基本は貧乏ネタで笑わせるコメディなのだが、ハートフルに終りそうになると脱力ギャグで冷ます2段オチのテクニックと、いつのまにかヤっちゃってなし崩し的に関係が出来ていく微妙なリアリティが絶妙。作品の根底をなす地味女子のいじけた幸福感がたまらなく愛しい反面、不思議ちゃんヒロインが一瞬だけ素に戻って見せる暗い情念、女の業に心底ゾッとさせられる。ネタ勝ち、企画勝ちだった『夕凪の街 桜の国』よりも、漫画としてはこちらの方がすごい。
★★★★★ ★★★ (8点)
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by wakusei2ndnews | 2005-10-09 04:00 | comic

WHO are YOU 中年ジョージ秋山物語

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 小学館『ビックコミックオリジナル』増刊号に2002年から2005年にかけて連載した自伝(?)マンガ。主人公は自分自身、担当者などもすべて実名。雑誌では本名の「秋山勇二」名義で発表。あるときは中年ジョージ秋山の愛と性におぼれる日々を描き、またあるときは若き日の悶々とした姿が描かれ、あるいはどこか寓話めいた奇譚が語られる。そして秋山は自身に問いかける。「WHO are YOU?」と……。


e0076213_0105688.gif 男の子ってこういう人をカッコイイって思多のかもしれませんけど、この人の漫画って、女の子をモノみたいに扱っているところが好きになれません。マンガとかアニメとかが好きな人には、『最終兵器彼女』のシュウちゃんみたいに優しい人が多いのに、昔のマンガって時々こういう男の人が出てきますよね。これ読んで面白いっていう人って、こんな風にいい加減なことをやって、他人を傷つけて生きたいと思っているんですか? だとしたら私はすごくショックです。男の人が書いた男の人が気持ちよくなるためのマンガだっていうのはわかります。でも、「男ってこういうものだ」で何もかも許されちゃうんですか?
★★★ (3点)


e0076213_010871.gif 人は誰でも平和や戦争について語るが心底思ってるのは金とセックスのことだけだ! 人は誰でも愛や癒しについて語るが心底思ってるのは金とセックスのことだけだ! 人は誰でも政治経済について語るが心底思ってるのは金とセックスのことだけだ! 人は誰でも宗教について語るが心底思ってるのは金とセックスのことだけだ! そんな虚しさ寂しさに捕らわれ女が信じられず人を殺したい幼女をさらいたいと魔が刺す時、ジョージ秋山先生が「WHO ARE YOU?」と僕らに優しく問いかける。 巻末インタビューも含めて全ての男にオススメ。
★★★★★ ★★★★★ (10点)


e0076213_094317.gif ジョージ秋山が自身を主人公にして描いた得意のメタ漫画。身辺雑記や自作の回顧、そして死生(性)観を好き勝手に描いていて楽しめるが、言っていることは過去の諸作で繰り返し描いてきたテーマの変奏にすぎない。作家としてのジョージ秋山は間違いなく完成している。だが、それでもなお自分に「WHO are YOU」と問いかけるこの人の旺盛な自己探求心は一体何なのか。それが秋山を大御所化させず、未だにこのような野心的変テコ作を描かせる原動力になっている。なお作中の秋山の前歯が欠けていることと、秋山の出発点となった『パットマンX』の主人公の前歯が欠けていることはたぶん偶然ではないだろう。
★★★★★ ★★ (7点)


e0076213_092395.gif 愛すべき、偉大な俗物が老境(失礼!)に残した佳作。大仰な語り口で展開する自嘲とナルシシズムの複雑怪奇な混合物。集大成と言えば聞こえはいいが、反面、酔っ払いの昔話みたいなものの域を出ていないとも言える。が、その照れと開き直りの入り混じった語りのダイナミズム(笑)は円熟の域に達したと言ってもいい。このこけおどしをありていな無頼派マッチョと忌み嫌い逃げ出すか、その奥にある屈折を読み取れるかでいい踏み絵になる。でもこれって、ジョージ秋山っていうジャンルだよね(笑)。自己撞着には違いないが、そんな自身に「WHO are YOU?」と問いかけて見せる辺りが泣かせる。
★★★★★ ★★ (7点)
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by wakusei2ndnews | 2005-10-08 00:15 | comic