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スラムオンライン

 
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 ネットゲーム中毒の主人公が、大学でメガネ不思議ちゃんをゲット!
 『よくわかる現代魔法』の桜坂洋が放つSF青春『スラムオンライン』を取り上げました!



e0076213_23263870.gif なんだか大学の頃を思い出して、切なくなっちゃいました。大学一年生の頃、仲が良かったオトコノコに私もよくノートを見せてあげたりしていました。結構趣味も似ていて、ゲームの話をしていました。ときどき、大学の外でご飯食べようって誘われていたけど、もしかして私にちょっとドキドキしてくれていたのかも……なんて思っちゃいました。結局、その人はいつの間にか大学に来なくなって、部屋でネットゲームばかりしているって噂がありました。だからネットゲームってちょっと暗い世界なのかなあって思ってたんですけど、本当は奥が深くて哲学的な世界だったんですね! ちょっぴり再発見です。
★★★★★ ★★★(8点)


e0076213_23304230.gif ゲーマー小説としての問題意識は正鵠を射ている。バーチャルな自己実現の可能性と限界、そしてリアルな他者からの承認の必要性。しかしその二つをうまく接続できていない。カノジョに認めてもらうことだけが戦う理由というのでは「ゲームをやるためにゲームをやっていた」という独白と矛盾しているし、坂上悦郎がパクのプレイヤーと相容れない理由も不明確だ。テツオとしての自己実現が坂上悦郎にフィードバックされ、坂上悦郎としての承認がテツオの戦う理由となるためには、もう一歩の踏み込みが必要だった。そのあたりをクリアにした上でもう一度このテーマに挑戦すれば、かなり面白い小説になるのではないかと思う。
★★★★★ ★ (6点)


e0076213_2327222.gif「俺より強い奴に逢いに行く」を地で行くネトゲ廃人の話なんだけど、現実側の恋愛パートがイタすぎるのが致命的。「幸せの青い猫」を探す不思議ちゃんと大学の講義で知り合ってゲーセンデート、途中DQNと乱闘して介抱されてるうちに終電逃すって……オタクが妄想する恋愛フラグそのまんまじゃん。おかげでリアルとバーチャルの狭間での煩悶にも切実さが感じられないし、終盤の自己発見もなんだかただの開き直りみたい。リアルの嘘臭さとバーチャルの現実感の対比という目線もありきたりで、オタクの実存小説としてもゲーム小説としても中途半端な出来。前作『All You~』が秀作だっただけに、なおさら不完全燃焼の感が強い。残念。
★★★★ (4点)


e0076213_23275741.gif ハッキリ言ってオタク向けの「失楽園」(もち渡辺淳一の)。要約すると「ゲームの世界で人生哲学を学んだ俺の魅力に、ベタボレしてくれる彼女とめぐりあいました」という話で、ダメオタの妄想を何の批評意識もなく(作者はありまくりのつもりなんだろうけど)紙に焼き付けただけの小説。東浩紀も他に褒めるものがないからって、コレはないでしょうに。まあ、夫人がモデルだって噂だし、恋愛パートだけならまだ受験生向けのドリームノートとして微笑ましく読めなくもないが、終盤の底の浅すぎる人生論だか仮想現実論だかはマジにゲンナリ。力はある人なんだから、こういうのは周囲の人が止めてあげないと。
★★★  (3点)
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by wakusei2ndnews | 2005-10-30 23:29 | novel

さよならCOLOR



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 人気バンド、スーパーバタードッグの同名曲をモチーフにした竹中直人の「連弾」('91)以来、ひさびさの監督・主演作。医師とガン患者として再会した高校時代の同級生の純愛を描く。
 海を臨む病院に勤める医師・正平(竹中直人)の元に、子宮がんを患った未知子(原田知世)が入院してきた。偶然にも未知子は、正平が高校時代思い焦がれた初恋の人、その当人であった……。

 

e0076213_1111654.gif 私、実は竹中直人さんって大好きなんです! 『ウォーターボーイズ』も『ピンポン』も竹中さんが出てくるだけで楽しい気分になっちゃいます。個性的な俳優さんって、やっぱりいいですよね! この映画もそんな竹中さんの個性がたっぷり楽しめるいい映画です。そして、最後はたっぷり泣けちゃいます。こういうのって、本物の純愛ですよね! 私もこれから付き合うなら、見かけばっかりの軽い人よりも、竹中さんみたいに気持ちがあったかくて、面白い人がいいなあって思います。主題歌とポスターの青い車のある海岸の景色がとっても素敵だったので、もっとたっぷり見せてほしかった気もします。 
★★★★★ ★★★★(9点)


e0076213_10594755.gif 風吹ジュン、鈴木京香、中山美穂点…と続く、竹中女優リスペクトシリーズの最新作に迎えたマドンナは『時かけ』の原田知世! 基本的に難病ものメロドラマなのだが、高校時代のクラスの変人とその憧れのヒロインという特異な関係がこの映画独特の味付けである。簡単にいえば高校時代に純粋すぎて恋愛を成就できなかった者が大人になってから恋愛リベンジする話で、彼女に惚れさせ、夫と別れさせるところまでいっておきながら、自分は犠牲になって死ぬという勝ち逃げパターン。逃げられた原田はどうすればいいのか。そう考えると男の願望だけで作った映画で、それがプラトニックなだけにかなりキザである。三枚目竹中だから許されるけどね。
★★★★★ ★ (6点)


e0076213_110755.gif 東京日和を大前提として観に行ったから、今回は裏ルートで来たなって思いました。竹中さんに品がないない、笑いに走る走る。最初、ちょっとだけ目をふせたくなったけれど(苦笑)、ラストにかけてはいつもの麗しさに流れていって最終的には同じ感じ。あと、東京日和にわざとシュチエーションを似せてつくっていました。男の心の美しさ(+地位とか才能)と、女性の見た目の美しさ(内面を反映しているかは不明)がくっきりと対比されています。それと、できるだけ原田さんを普通の女性にみせる努力をしていました。前のようにヒロインを偶像として描いてはいなかったです。そこらへんが新鮮といえばそうかも。
★★★★★ ★ (6点)


e0076213_1102525.gif 竹中直人が自分の役者としての個性がどうすれば生きるかという計算と、願望充足的なオヤジ妄想との間でうまくバランスを取った作品。内容的には『電車男』みたいな非モテ男子が「人間的な深さ」を見せて美人をゲットする話。ややクサ目だが、丁寧につくられていて大抵の人間が素朴に「観て良かった」と思うであろう良作ではある。しかし、劇場の大画面で観なきゃ損する絵があるわけでもないし、今すぐ観なきゃ!というようなドキドキ間もまったくない凡作でもあるので(笑)暇なときにビデオを借りてくるだけで充分でしょう。原田知世はオバさんになってからの方が、普通に綺麗で好きだなあ。
★★★★★ (5点)
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by wakusei2ndnews | 2005-10-23 11:00 | movie

サマー/タイム/トラベラー

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『蓬莱学園』の新城カズマが「宇宙戦争や銀河帝国もない、完璧な空想科学小説」と銘打って放った話題作。田舎町の優等生が集まってつくった男女混合のSFファングループ(笑)で、ある日メンバーのひとり(不思議ちゃん美少女)が時間跳躍能力を身につける。喜び勇んで能力の分析に乗り出すメンバーたちだったが、事態は予想外の方向へと転がっていくのだった……。

 凝った構成と鮮やかな仕掛けを絶賛する声の一方で、ペダンティックでオタク趣味丸出しのキャラ設定に賛否両論が渦巻いた本作を、遅ればせながらレビューします。


 
e0076213_1195846.gif 感動しました! こういうこと告白するの恥ずかしいけど、私、高校の頃はずっと悠有ちゃんみたいなことを考えていました。アニメ研究会にはSFと自転車が好きなオトコノコがいて、政治のこととか哲学のことにも詳しくて、とっても尊敬していました。私の悩みをいつも真剣に聞いてくれて……。少し斜めに構えていたけど、心の暖かい人だったと思います。結局、アニ研はそんな私の友達のオトコノコ同士がケンカしちゃって誰も部室にこなくなっちゃったんですけど、そんな苦い思いでも一緒に包んで未来へ運んでくれるような、素敵な作品だと思います。最後の悠有ちゃんの旅立ちには、本当に勇気づけられました。お勧めの大傑作です!
★★★★★ ★★★★★ (10点)

e0076213_1193788.gif 正直言って、あんましよく分からんかった。俺もかつては田舎で鬱屈を持て余す優等生(笑)だったのでそのあたりの空気はよく分かるんだが、ペダンティックに言及される作品の数々はほとんど読んだことがないし、タイムトラベルというネタにもこれといった思い入れがないので、なんかね。
 しかしこの物語って、SFである必要はあんまりなかったんじゃないかという気がする。別にSFがSFでしか描けない物語しか描いちゃいけないとは思わないし、そもそもハヤカワなんだからSFじゃないと困るんだろうけど、SFでなければ俺にも少しは理解できたんじゃないか。よく分かんないけど。
★★★★ (4点)

e0076213_1192289.gif 一言で言うと、天然不思議ちゃんを取り巻く天才病の田舎系少年少女達の妄想譚(天才病については松浦理英子『セバスチャン』を参照)細部描写は凝っているが、一方で高偏差値ならではのメタ視の虚勢と、甘ったるい挫折と、少女に希望を託す過程を回顧する構図とが「宇宙戦争や銀河帝国もない、完璧な空想科学小説」と言う帯の惹句に反して、それら「大状況」的なセカイ系作品と全くの同類に見えてしまうのは気のせいだろうか。SFと言うフォーマットが青春物語と親和性が高いのは分かるけど、精神的オナニーのカタルシスと、センスオブワンダーを混同されても困るだけ。オナニーしすぎてると、バカになっちゃうよ!(笑)
★★★★ (4点)

e0076213_1185811.gif SFというのは今や社会主義のようなもので、だとするとハヤカワはキューバだ。「もとSF好きの田舎優等生」として、主人公達の激イタい勘違いぶりのリアルさは認めるが、オチが不思議ちゃん(しかも名前は「悠有」……笑!)のイノセンスって辺りが本当にどうしようもない。虚勢を張ったところで、SFファンダムがスノッブとロリコンのるつぼだってことを再確認させてくれる作品。こういうオッサンたちの楽園(キューバ)は大切にしてあげないといけないと思わなくもないけどね(笑)。上の世代に媚びてるのか、このオタ臭く甘ったるいスノビズムの救済にしびれてんのか知らないけど、「これを褒めなきゃ」みたいな空気が若い層にまであるのが情けない。キューバってカストロ死んだらどうなると思ってんの?
★★★★★ (5点)
 
 
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by wakusei2ndnews | 2005-10-22 11:12 | novel

白線流し ~夢見る頃を過ぎても

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 95年の最初の連続ドラマ放映から10年。「視聴者に媚びないドラマ」を合言葉に(笑)、男女7人の青春を描いてきた『白線流し』シリーズもついに完結。
 海外青年協力隊で知り合った美里と結婚して、製材所で働く渉。その渉と別れを告げ、母校・松本北高校の教員として働く園子、一児の母となったストレスで酒びたりになったまどかとその夫の慎司。東京でそれぞれ、弁護士とスタイリストとして活躍する優介と茅乃。そして脚本「白線流し」を投稿できずにいる冬美……。
 七人が30を目前に落としどころを探る最後のテレビスペシャルをレビューしました。 公式サイト



e0076213_23521340.gif この作品の最初のシリーズは、私がちょうど受験生のときにテレビでやっていて、毎週楽しみに観ていました。私もソノコちゃんたちと同じように、当時進路のことですごく悩んでいて……でも最後まで夢を諦めない渉さんに勇気をもらって、人間の心の不思議を勉強するために心理学科を受験しました。大学に入ったばかりのころは、ソノコちゃんみたいにちょっと遊んじゃったこともありました。結局、今の私はカウンセラーにはまだなれないでいるけれど、何年かに一度、『白線流し』のスペシャルがあって、それを見るたびに自分を見つめなおしています。さすがにちょっと強引な終わり方だったけれど、渉さんが天文台に就職できて良かったです!
★★★★★ ★★ (7点)


e0076213_23523131.gif 変にリアルなトコと古臭い少女漫画的な世界観の組み合わせがちぐはぐ。ネタとしてはいいけど真剣に見る気にはなれない。まぁ、大きすぎる過去とどう折り合いをつけるか?というトコで同じ信本敬子のカウボーイビバップを 連想して楽しめたけど、長瀬の奥さんのご都合主義的な排徐はどうだろう? それにしても無理に思い出や腐れ縁の仲間と切れずに傷を舐めあって歳を重ねてくのは別にいいんだけど「思い出オナニー」を見せ付けられるのは小学生にとってはたまったもんじゃないよなぁ……と思い入れのない身としては思った。はいはい羨ましいんです。俺も8番目の星になって青春送りたかったんだよ。畜生!
★★★ (3点)


e0076213_23525061.gif ん~、結局ソノコは弁護士のあいつにヤらせたのか? それともやらずぼったくりだったのか? これでサークルクラッシュしないなんて、長野の人はきっと自然に囲まれて素朴に育ったから気性が穏やかなんだろうな。俺はこのドラマに出てくる奴等とほとんど同い年で、最初のドラマも高校の寮で観ていたんだけど、作っている奴等が「人間27、8になれば田舎に帰ってつまらない人生送ることに納得するだろ」と思っているのがすげームカつく。ヒトラーが27歳の頃なんて、まだ一等兵か二等兵だろ?悪いけど俺は、まだまだ「これから」だと思っているけどね。 俺も長瀬みたいに、夢をあきらめないぞ~。
I shall return ……!
★★★ (3点)


e0076213_23531777.gif 照れながら、突っ込みながらお茶の間で楽しむ分には最初のシリーズは良作だと思うんだけどね……。その後のテレビスペシャルは、オッサンとオバちゃんが手探りで「最近の若い人ってこうなんじゃいないの?」って考えて話を作っている感じがすごくして、そして見事にその中途半端なリアリティが空回りしていた。唯一本当にリアルだったのは主人公・七倉ソノコの無自覚なお嬢さんぶり。この愛すべき優等生特有の勘違いだけはすげーリアルだった。この完結編について話すと、無理矢理終わらせすぎ。渉の奥さんは死ぬし、最後は何故か天文台が生き残るし、とりあえずハッピーエンドにしましたって感じ。ソノコたちよりスタッフが迷っているよね。
★★ (2点)
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by wakusei2ndnews | 2005-10-19 23:53 | drama

メゾン・ド・ヒミコ

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 『ジョゼと虎と魚たち』で一世を風靡した犬童一心監督×渡辺あや脚本コンビの第二弾は、5年間あたためた企画『メゾン・ド・ヒミコ』。
 ゲイである父親に捨てられた過去もつヒロイン(柴崎コウ)が、父の若い愛人(オダギリジョー)の勧めで、父の経営するゲイ専門の老人ホーム「メゾン・ド・ヒミコ」のスタッフとなり、死病に侵された父との再会、そしてゲイコミュニティとのふれあいを体験する。



e0076213_22583661.gif 大好きだった『ジョゼと虎と魚たち』から2年……ついに渡辺あやさん(脚本)と犬童一心さん(監督)のコンビの映画が登場ですね! ゲイの人たちの話と聞いて、最初はちょっと入り込みにくいなあって思っていたんですけど、後半はあの老人ホームがひとつの家族みたいに思えてきて、とっても暖かい気持ちになれました。こんな人間関係があれば、きっと何があっても強く生きていけますよね。オダギリさんと柴咲コウさんには結ばれて欲しかったけど、最後はとっても感動しました。一番好きなシーンはみんなで夜の街に遊びに行くところです。観て絶対損はしないいい映画です。騙されたと思って観て下さい!
★★★★★ ★★★★★ (10点)


e0076213_230309.gif 実現するまで5年もの歳月がかかった本作は同監督の『タッチ』とは比べ物にならないぐらい濃密にグツグツと煮込まれていて、見終わったあと、しばらく頭の中で整理がつかない。ここでいうゲイとは一人一人が生まれながらに違っているという人間の「個」の象徴であり、これはその「個」を巡る物語である。脚本の渡辺あやは「個」と血縁は切り離せるのか、「個」の共同体は可能なのか、また愛に「個」は必要だが肉体関係に「個」はむしろ邪魔だとか、あらゆる視点から「個」の問題に切り込んでいく。結局老いや死の前では「個」は滅ばざるを得ないのだが、それゆえに「個」が見せる一瞬の煌めきが実にいとおしく美しく描かれる。注目すべき力作。
★★★★★ ★★★★★ (10点)


e0076213_22592712.gif ジョゼと比べるとメゾンはすこし散漫だったし、新鮮さに欠けていた気がしました。桃源郷的な共同体もゲイとの関係も嘘っぽい話なので、ファンタジーに徹するかリアルで通すかはっきりしてほしかったです。例えばダンスシーンで現実(素の表情っていう意味でのリアル)に引き戻されたりすると、観てる側としては非現実的な側面に注目せざるを得なくなります。コスプレのシーンにもちょっと違和感を感じました。ただしこれらすべてを凌駕するほどにオダギリジョーが麗しい。だからメゾンはトータルでは好き。ってかオダギリ最高。彼は確実に良くなっています。数年前に見たときはうすっぺらないまどきの美男子だったのに。こんなにいい男だったっけ?
★★★★★ (5点)


e0076213_22594746.gif『ジョセ』が身障者や部落差別の問題を口当たりのいい泣きサプリメントに加工した作品なら、今度は「ゲイ問題」で同じ手を使った作品(笑)。悪意すら感じるこの手法は政治的には問題アリかもしれないが、威力は抜群。犬童全開の淡い画面作りや絶妙な対象への距離感も相まって、構造が全部透けて見えるのについ手が伸びてしまう上品な味わいに仕上がっている。マイノリティとの交流をレジャーとして消費することへの後ろめたさが織り込まれているのも前作同様だが、『ジョゼ』ではそこで被差別者の覚悟と諦念が提示されたのに対し、本作では一歩進んで差別者のレジャーを受け入れる寛容さが希望として提示されるのが興味深い。現代的な疎外感(笑)が擬似家族に回収されるってのはありがちな発想だけど。
★★★★★ ★★★ (8点)
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by wakusei2ndnews | 2005-10-17 23:03 | movie

AMEBIC

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 さあ私の太陽神よ、舞い上がれ。安宿に泊まる私を照らせ。「ああ寂しいああ悲しいふふ一人だ私は」 作家のパソコンに残された錯文。孤独と分裂の果てに、「私」は、それを「彼」に伝えようとするが……。

と、いうことで金原ひとみの第3作『AMEBIC』。美少女作家大好きのレビュアー陣の評価はいかに?


e0076213_15271719.gif 金原さんの作品って、なんだか壊れた人ばかりが出て来るイヤなお話ばっかりなんですけど、そんな雰囲気をどこかぽーんと突き放すようなところがあって、読んだ後は何故か不快にならないんです。この『AMEBIC』の主人公は、金原さん自身がモデルっぽい若い女の作家さんなんですけど、この人の変な行動を見ているととっても気持ちいいいんです。なぜか、この人みたいにどろどろ・ぐちゃぐちゃしている人の方が自然体で好感がもてて、途中出てて来るまともな人たちの方がなんだか不気味に見えてくるから不思議です。孤独な女の子の切なさが、読んでいてきりきりと伝わってきます。
★★★★★ ★★★ (8点)


e0076213_15273718.gif 宣伝用の本人の痩せたグラビア写真で、まず+1.まぁアッシュベイビーよりは下がるけど面白かった。楽
しみ所は躁鬱激しい自意識のジェットコースターに乗ってるようなドライブ感。特に感情が盛り上がった後、萎えてく瞬間(理解不能だから唯一無二だったはずの錯乱文が編集者にあっさり解説されてしまう所)が痛気持ちいい。多分この人が書きたいのは「特別な私を志向する凡庸な私の恥ずかしさ」で、それが自身の状況へのの自己言及になっていて自分がどう消費されてるかよく分かってるなぁと思う。だから次回作には本人のグラビアを10ページくらいつけてほしい。そこまでやった時 、金原ひとみという文壇アイドルは完成する!
★★★★★ ★ (6点)


e0076213_15275399.gif 身体性の欠如、分裂、自己自身からの疎外と言うテーマ、"錯文"や無記名な日常と言った手法それ自体が、特に目新しくも無ければ面白くも無いことは置くとして、金原ひとみ氏のデビュー3作目はそれなりに面白いと思う。『蛇とピアス』にあったブンガク好きのオッサンへの媚めいた、サブカル馬鹿っぽい作り物の生臭さは消え、逆に作り物そのものと言った、金原自身を思わせる小説家の隙間の多い日常と、異様なテンションの"錯文"のコントラストが、自己からの乖離を際立たせる。恋人への想いが断ち切れるように消え去ってしまうラストの呆然とした感覚は、セカイ系なんかよりも全然切なくて泣かせると思う。☆の数は今後への期待も込めて。
★★★★★ ★★★ (8点)


e0076213_15281069.gif 金原ひとみを一言でいうと「狂気に憧れる凡庸」だろう。本人は「わかってやってるよ」というサインを散りばめているが、浅いところで空回りしている。例えば本作の見せ場である「錯文」&「語り」パートの寒さを考えるとかなり頭が痛くなる。こういう手法や身体性なんて「いかにも」なテーマ設定自体が悪いとは言わない。でも本当に「トパーズもの」(笑)を書き続けることが彼女の資質にあっているのかはかなり疑問。反面、主人公とその恋人の婚約者が対峙するシーンや、街に出たときの描写、プロット運びは今までの中で一番巧く、なかなか読ませる。変化球を投げるほどこの人はベタベタになるのだから、次は直球勝負でいい。
★★★★★ (5点)
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by wakusei2ndnews | 2005-10-15 15:35 | novel

長い道


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04年、傑作原爆もの『夕凪の街、櫻の国』が「安心して泣ける泣きサプリメント」としてヒット、その地味ながらも地に足の着いた作風で高い評価を受けたこうの史代の待望の新刊。双葉社「素敵な主婦たち」に01年から04年まで連載されたものに、同人誌等で発表されたエピソードを追加した単行本。典型的な「だめんず」宗介と、そんな宗介のもとに親同士の約束でやって来た押しかけ女房・道の何気ない日常を描くハートフルコメディ。



e0076213_3535416.gif なんか他人事のように思えませんでした。私も高校の頃、ちょっと好きだったアニメ研究会で一緒だったオトコノコのことを「○○どの」とか呼んでいました。お道ちゃんと宗介どのって、やっぱりお似合いのカップルですよね。道ちゃんが田舎から出てきたのって、竹林どののことを忘れられなかったからだとなんですけど、ずっと宗介どのと一緒にくらしているうちに、「偽者の恋」は本物になっていったんだと思います。特に大きな事件があったりするわけでもなくて、何気ないできごとがいくつも重なって、だんだんとふたりが近いづいていくところが好きです。
★★★★★ ★★★★★(10点)


e0076213_354886.gif こうの史代の描く日常は豊かで奥深い。貧乏な二人のささやかな日常は笑いに満ちている。でも、時々底に沈んだ今まで押し殺してきた何かが吹き上がる瞬間がある。それが「夕凪の街 桜の国」では被爆体験という形で描かれ、本作では失恋という形で、その記憶が溢れ出す。夕凪~が少し不幸な受け方をしたのは、その吹き上がりにのみ注目が行ってしまったからだが、本作を読むと、こうの史代がそれも受け入れた日常の深遠に視線があることが理解できる。不覚にもこんな日常を送りたい、こんなお嫁さんが欲 いと思ってしまった。 ……まぁリアルに居たら大変なんだろうけどね。
★★★★★ ★★★ (8点)


e0076213_3584199.gif 一言で言うと押しかけ女房話……って、これ『ああっ、女神さまっ』とどう違うんですか……? と茶化すと色々怒られそうだけど。冗談はともかく、「終わらない日常」と天然ボケで「いいひと」な女の子に癒されて動物化するヲタから、『夕凪の街 桜の国』に「感動」にしてしまった一般の読者まで、広い範囲に届く性質を持った作品であるのは確か。また作品そのものも、漫画として非常に優れている。柔らかく細かいタッチの絵は漫画を読む快楽を掻き立てられるし、「偽物の恋」が細かな日常を積み重ねる中で、逆説的に「本物の恋」に変化する言う仕掛けを丁寧に描ききる力は驚嘆に値すると思う。普通にオススメな作品です。
★★★★★ ★ (6点)


e0076213_359511.gif 不思議ちゃん開花済みの非モテ地味女子が、「だめんず」に引っかかって小さな幸福(妥協カップル)を見つける話。基本は貧乏ネタで笑わせるコメディなのだが、ハートフルに終りそうになると脱力ギャグで冷ます2段オチのテクニックと、いつのまにかヤっちゃってなし崩し的に関係が出来ていく微妙なリアリティが絶妙。作品の根底をなす地味女子のいじけた幸福感がたまらなく愛しい反面、不思議ちゃんヒロインが一瞬だけ素に戻って見せる暗い情念、女の業に心底ゾッとさせられる。ネタ勝ち、企画勝ちだった『夕凪の街 桜の国』よりも、漫画としてはこちらの方がすごい。
★★★★★ ★★★ (8点)
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by wakusei2ndnews | 2005-10-09 04:00 | comic

WHO are YOU 中年ジョージ秋山物語

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 小学館『ビックコミックオリジナル』増刊号に2002年から2005年にかけて連載した自伝(?)マンガ。主人公は自分自身、担当者などもすべて実名。雑誌では本名の「秋山勇二」名義で発表。あるときは中年ジョージ秋山の愛と性におぼれる日々を描き、またあるときは若き日の悶々とした姿が描かれ、あるいはどこか寓話めいた奇譚が語られる。そして秋山は自身に問いかける。「WHO are YOU?」と……。


e0076213_0105688.gif 男の子ってこういう人をカッコイイって思多のかもしれませんけど、この人の漫画って、女の子をモノみたいに扱っているところが好きになれません。マンガとかアニメとかが好きな人には、『最終兵器彼女』のシュウちゃんみたいに優しい人が多いのに、昔のマンガって時々こういう男の人が出てきますよね。これ読んで面白いっていう人って、こんな風にいい加減なことをやって、他人を傷つけて生きたいと思っているんですか? だとしたら私はすごくショックです。男の人が書いた男の人が気持ちよくなるためのマンガだっていうのはわかります。でも、「男ってこういうものだ」で何もかも許されちゃうんですか?
★★★ (3点)


e0076213_010871.gif 人は誰でも平和や戦争について語るが心底思ってるのは金とセックスのことだけだ! 人は誰でも愛や癒しについて語るが心底思ってるのは金とセックスのことだけだ! 人は誰でも政治経済について語るが心底思ってるのは金とセックスのことだけだ! 人は誰でも宗教について語るが心底思ってるのは金とセックスのことだけだ! そんな虚しさ寂しさに捕らわれ女が信じられず人を殺したい幼女をさらいたいと魔が刺す時、ジョージ秋山先生が「WHO ARE YOU?」と僕らに優しく問いかける。 巻末インタビューも含めて全ての男にオススメ。
★★★★★ ★★★★★ (10点)


e0076213_094317.gif ジョージ秋山が自身を主人公にして描いた得意のメタ漫画。身辺雑記や自作の回顧、そして死生(性)観を好き勝手に描いていて楽しめるが、言っていることは過去の諸作で繰り返し描いてきたテーマの変奏にすぎない。作家としてのジョージ秋山は間違いなく完成している。だが、それでもなお自分に「WHO are YOU」と問いかけるこの人の旺盛な自己探求心は一体何なのか。それが秋山を大御所化させず、未だにこのような野心的変テコ作を描かせる原動力になっている。なお作中の秋山の前歯が欠けていることと、秋山の出発点となった『パットマンX』の主人公の前歯が欠けていることはたぶん偶然ではないだろう。
★★★★★ ★★ (7点)


e0076213_092395.gif 愛すべき、偉大な俗物が老境(失礼!)に残した佳作。大仰な語り口で展開する自嘲とナルシシズムの複雑怪奇な混合物。集大成と言えば聞こえはいいが、反面、酔っ払いの昔話みたいなものの域を出ていないとも言える。が、その照れと開き直りの入り混じった語りのダイナミズム(笑)は円熟の域に達したと言ってもいい。このこけおどしをありていな無頼派マッチョと忌み嫌い逃げ出すか、その奥にある屈折を読み取れるかでいい踏み絵になる。でもこれって、ジョージ秋山っていうジャンルだよね(笑)。自己撞着には違いないが、そんな自身に「WHO are YOU?」と問いかけて見せる辺りが泣かせる。
★★★★★ ★★ (7点)
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by wakusei2ndnews | 2005-10-08 00:15 | comic

NANA

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「あたしは運命とか信じちゃうタチだから、あたしたちの出会いは運命だったと思うんだ」……原作は矢沢あいの人気コミック。同じ日に同じ列車で上京した同名のふたり奈々(宮崎あおい)とナナ(中島美嘉)は同い歳の二十歳。恋愛依存症の奈々とメジャーデビューを狙うロックバンドのシンガー・ナナは、偶然東京で再会し、ひょんなことから同居をはじめる……。
 って、ことで話題の『NANA』映画版です。


e0076213_0141997.gif 矢沢あいさんは『天使なんかじゃない』の頃からの大ファンです。あの頃の矢沢さんは普通に楽しい学園生活を描いていて、私はどっちかというとクラスの隅の方にいたのですっごく憧れていました。『NANA』ってそんな矢沢さんの集大成。それも宮崎あおいちゃんに中島美嘉さん、松田龍平さんに、玉山鉄二さんなんて夢のキャストで映画化なんですからもうサイコーです。中島さんの主題歌も素敵だし、言うことナシですね! 映画は本当にいいところで終わっていて、この後ハチを中心にどろどろの関係になっちゃうことを考えるとちょっとフクザツ。でも、とっても面白かったです。
 ★★★★★ ★★★★ (9点)


e0076213_014377.gif 映画としてはカット割りも単調でアップが多すぎてイマイチだったけどNANAとしてはこれでOKだと思う。必要以上に詰め込まなかった手堅い脚本が成功の要因。 まぁ男の役者がノブ役の成宮君以外はイマイチだったけどそのギャップも面白がる要素として有りだと思う。ただブラストやトラネスのバンドとしてのカリスマ性がいざ実写化された時、ただのJ・POPにしか聴こえなくて、それでいいのか?と思ったけどやっぱりNANAとしてはこれでOKだと思う。あとアニメ声の幸子がショウジを毒牙にかけ落としていく過程は必見、普通に面白い。だから結論としては女子高生からキャバクラ嬢まで満足できる作品にはなっていると思う。
 ★★★★★ (5点)
 

e0076213_0133926.gif 漫画の方は読んでいないので、大谷健太郎監督作品として見た。この人は『アベック モン マリ』や『とらばいゆ』などドロドロの人間関係を描くのが得意だが、本作もその作家性がうまく生かされている。ハチの彼氏が心と裏腹にバイト先の女とくっついて、それを目の当たりにする場面などは両者に同情できるので、大の男が思わずもらい泣きしそうになった(笑)。またナナがレンに鍵を返しに行くも引き戻されて、エレベーター前で泣き崩れる演出も、最近の薄っぺらな映画とは違い、真っ向からドラマに挑んでいて見応えがある。宮崎あおいは相変わらず上手いが、中島美嘉は前半かなり辛い。後半は慣れてきて上手くなっていたが。
 ★★★★★ ★★★ (8点)
 

e0076213_0132741.gif 原作のまとめ方が巧い。傑作サークルクラッシャー話だった『約三十の嘘』には劣るが、修羅場大好き監督大谷の起用も当って、誰が観ても楽しめるよくできた作品に。矢沢あいってプロットと内面描写はイイんだけど、センスが悪いのがネック。雪国の苦労話とか、ネーミングとか、さすがに恥ずかしいけど、客層考えるとこれぐらい大味じゃないといけないのは納得。フツーの人は勿論、(今更の)QJ矢沢特集とか読んで(今更)お勉強中のC級文化オヤジにもわからせなきゃいけないしね(笑)。宮崎あおいの「可愛いけど絶対付き合いたくない女」ぶりと、サエコのアニメ声が強烈。中島と松田はコスプレにしか見えないが微笑ましい。
 ★★★★★ ★ (6点)
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by wakusei2ndnews | 2005-10-04 00:17 | movie