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ホテル・ルワンダ

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 アフリカのルワンダで内紛による大量虐殺の危機から人々を救った、実在のホテルマンの姿を描いた感動ドラマ。日本公開は危ぶまれていたが、若者によるインターネットでの署名運動が功を奏し、公開が実現した話題作。ブログ論壇に話題を提供し、若者たちを夜な夜な充実した議論の世界に招き入れた(?)本作を徹底レビューします!


e0076213_2332165.gif 号泣です。そして不安になりました。たった10年くらい前に、同じ世界の遠い国でこんな酷いことがあったなんて! それなのに私は、この平和な日本でのんびりと暮らして、マンガやアニメのことばかり考えていたなんて……。今すぐ「何かしなきゃ」って気持ちになりました。とりあえず今すぐブログを借りて、この違和感をもっとたくさんの人に訴えたいと思っています。それが、私に出来る数少ないことだし、私みたいな人でも誰かの役に立てるんだなあ、と思うととっても充実します。ルワンダの虐殺のことを知ることで、私の生きる道がわかったような気がします。
★★★★★ ★★★★★ (10点)


e0076213_2333740.gif 話題性先行のブームになってしまっている感はあるが、やはり作品自体の力もスゴい。次から次へと迫り来る危機を機転と勇気で切り抜けていくという正統サバイバルホラーとしての面白さをしっかりと満たしつつ、ドン・チードルの情けないほどの小市民っぷりが、民族浄化というブッ飛んだ状況の凄惨さを際立たせている。 ただし基本的にノンフィクションだから見終わったあとやりきれない気分になるのはまず間違いないので、見るかどうかは自己責任で。欧米がルワンダを見捨てる直接の契機となる事件を描いた『ブラックホーク・ダウン』も併せて観ると、精神衛生的にはちょうどいいかも。
★★★★★ ★★ (7点)


e0076213_2335639.jpg 「出てくる人全員ものすごく普通で普通過ぎてその普通っぷりにうちひしがれた。皆自分の損得を第一に考えて、そこから最善の策を切り出そうとする。そのギリギリの線が美しいなあと思いました。ポールさんとか国連軍の大佐とか。あと出国しようとしたけど不本意な形でホテルに戻ってきた奥さんのブチギレっぷりとかがよかった。トータルで人間臭い映画だなあと思いました。あ、でも車襲ったりする民兵の皆さんやる気なさ過ぎ。バイト君かお前ら。フツパワーはそんなものなのか!なんつーかポールさんになれる自信はまるっきりないので、せめてラジオに煽動される人たちみたいにならないように生きていきたいなあ、なるべく。
★★★★★ ★★★★★ (10点)


e0076213_2341239.gif 正直、公開署名運動には「みんな<確実に価値のあること>が欲しいんだね」と冷笑していた天邪鬼な僕ですが、いざ観に行くとフツーに出来のいいお涙頂戴映画になっていて感心&反省しました(笑)。ごめんなさい、心打たれまました、ハイ。「これは実際にあった話なんだ」というリアリティと、娯楽映画としての単純化の塩梅が絶妙で、例えば「いい人」と「悪い人」の境界線がかなりはっきりしたキャラ配置になっていることも見ている間は(気付いたけど)まったく気にならなかったほど。圧倒的な暴力を止められないもどかしさの演出も巧い。さすがにネットで騒がれているようなナイーブな正議論には関心がもてないけど、観て外れのないアンパイ映画としてオススメ。
★★★★★ ★★ (7点)
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by wakusei2ndnews | 2006-03-30 23:04 | movie

エリ・エリ・レマ・サバクタニ

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 西暦2015年。感染すると突発的に自殺してしまう正体不明のウィルス<レミング病>が世界中に蔓延、世の中は恐怖と絶望に覆い尽くされようとしていた。発病を抑制する唯一の方法は、日本のあるミュージシャン2人が奏でる“音”を聴くことだという。大富豪ミヤギは、レミング病に感染した孫娘ハナの命を救うため、探偵を使って2人の行方を探し始めるのだった…。

 「EUREKA ユリイカ」「レイクサイド マーダーケース」の青山真治監督の最新作。
 主演は、共に青山作品2度目の登場となる浅野忠信と宮崎あおい。中原昌也、筒井康隆の異色キャストの出演も話題に。 
 
 
 
e0076213_23261454.gif 感動しました! 私もこの映画のあおいちゃんくらいの頃は、なんだか生きている意味がわからなくて、神戸の事件とかニュースで見て「人を殺していけない理由ってなんだろう」とか考えていました。手首に刃物をあててみたこともあります。お薬を飲んでいたこともありました……。そんなとき助けてくれたのが、いろんな作品との出会いなんです。きっとこの映画のあおいちゃんも、浅野さんの音楽を聞いて、なにかすっごく大きなものに出合って、そして「死にたい」って気持ちに打ち勝ったんだと思います。私の生涯のバイブル・宮台先生の「サイファ」を思い出しました! 明日からまた読み返そうと思います。レッツ・サイファ!
★★★★★ ★★★★★ (10点)


e0076213_23321638.gif ポストモダンな昨今、ノイズこそオルタナティヴだよね的な映画だったら嫌だなと心配していて、実物を見てからもしばらくは罵倒の文句ばかりが脳内に沸き起こったのだが、中盤以降の展開を見ているとやはりそう単純な話でもないと思い直した。延々と音ばかり鳴っている作品だが映像と音の主客逆転と思われる場面が何度かあり、両者の緊張関係によって音響が単なるノイズ(雑音)ではない自由を獲得するという逆説的な構造はなんとなく分かる。実際あまりうるさいとも思わなかった。この映画自体がヴェンダースの『夢の果てまでも』を強く意識している点も興味深い。阿部和重のメイキングが楽しみ。
★★★★★ ★★★ (8点)

 

e0076213_23323861.gif 映画はロックだ?(ロックじゃなくノイズらしいけど) ヴェンダースの影響? ジョン・カーペンターみたいに世紀末SF仕立てでやりたい放題やっているが、いかんせんインテリの出自が邪魔して、バカになりきれていない。映画的教養と現代の寓話みたいにしているのが鼻につく。この辺りが青山の限界か。拾いものは中原昌也の奇妙な存在感。出番は少ないのだが、なんか彼が自転車に乗っているだけで面白い。「死ね!」と食堂から飛び出していく場面なんか最高。そこは私だけでなく場内から笑いが漏れていた。たぶん彼の文章から受けるイメージに近かったからだろう。たむらまさきによる撮影が美しかったので、一応退屈はしなかった。
★★★★★ (5点)


e0076213_23325869.gif 自殺病=現代的な(90年代後半的だけど)疎外感という安直な暗喩、音楽(超越性)による救済というベタな構図(よりにもよってノイズ!)、そして浅野(超越性に接続できるアウトロー)が宮崎(体温の低そうな厭世感漂う少女)を救うなんていう援交オヤジロマン全開の発想(笑)。無駄に玄人受け狙っているけど、要はオヤジ妄想が理論武装してあるだけ。完成度も低く、100%展開が予測できる安易な筋書きも酷いが、「大草原の下で魂のノイズ演奏」とか、「その演奏で失神する宮崎」とか、「あっさり描くことで『死』を強調する手法」とか、演出的にも見てるこっちが恥ずかしくなる絶望的にアレなシーンの連発が辛すぎる。10年前ならいざ知らず、今更これはない。でもみんな「青山だから」褒めるんだろうね。
★★★ (3点)
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by wakusei2ndnews | 2006-03-27 23:33 | movie

りはめより100倍恐ろしい

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 最近とっても心のこもった「ライトノベル特集」で心ある読者の関心を色んな意味で買い占めている角川「野生時代」。その切り札たる「青春小説大賞」第1回受賞作はなんと現役中学生が「ケータイ」で書いた作品だからというから驚きだ!
 中学時代、グループで「いじられて」いた羽柴少年。人気者には違いないが、はっきり言ってキツイ毎日を過ごすことになる「いじられキャラ」を脱出するために、高校バスケ部で権謀術数を用いていく……。
 果たして羽柴少年はいじ「め」よりもある意味恐ろしいいじ「り」から逃れられるのか!?
 
 角川「野生時代」が送り出す「新時代の青春文学」を徹底レビューします!



e0076213_22251353.gif 文学ってなんだか重くて暗くて、私には分からないような難しいことを考えているようなイメージだったんですけど、最近の10代のみなさんが書いた小説はどれもわかりやすいし、扱っているテーマも身近でとっても共感できるものばかりです。綿矢りさちゃんの『蹴りたい背中』でもちょっと難しかった私ですが、この作品は男の子たちの会話が楽しくて一気に読んじゃいました。あと高校時代のクラスのことなんか思い出せて、すっごくリアルでした。なんでみんな、私とお弁当食べてくれなかったんだろうなあ……とか、ちょっと凹みました。それにしてもこんな小説を中学生がケータイで書いちゃうなんて、さすが21世紀ですね!
★★★★★ ★★★★ (9点)


e0076213_22254434.gif 賞の候補作になった時に読んでダントツにコレが面白かったので受賞は納特だが、いざ出版され同じような河出系の作品と比較するとどうしても出遅れた感を感じてしまう。 仮にこの手のジャンルをスクールサバイバル文学と呼ぶなら、中高生が今感じているだろう小さな人間関係のキツさ、「いじり」というヌルい地獄の描写は秀逸で読ませるのだけど、そういう現状認識から一歩出ようという意識がある平成マシンガンズに心情的に軍配をあげたくなる。 まぁ、深く考えないでマンガの稲中や幕張のノリで楽しんでもそれなりに楽しめるんだけど少なくとも新しくはない。 それにしてもこの手の作品を書く若い子がどんどん増えてこのジャンル自体がチープ化するんだろうなぁと思うと暗鬱になる。
★★★★★ (5点)


e0076213_2226263.gif ここで描かれている「厄介さ」というのは、どこにでもある凡庸な、にもかかわらず極めて悲惨な類のものである。集団が安定するためのスケープゴートとして「いじられ役」が要請され、そこから逃れるために弱者同士の蹴落としあいが繰り広げられる。その打算と勘繰りのパワーゲームの勝者を目指しながらも、どこか甘さの残る主人公は、この年頃の男子の実像としては実にリアルだなあ、と10年前の自分を鑑みて思ったり。ただ、せっかく抜け出たと思ったいじり・いじられの因果律に、再び引き戻す結末には不満。そこから外へ出るのはそう難しいことじゃない。そんな貧しい関係性が場を支配するのは、結局自分たちが幼稚だからってことに気付こうよ。
★★★★★ ★★ (7点)


e0076213_2226212.gif 見事なまでに一昨年の文藝賞「野ブタ。(原作)」の変奏。中高生の陰惨な人間関係(キャラの立てあい)をコメディ調に仕上げる手法が完全に同じで、主人公が逆転負けするオチまで同じ。「いじり」というアイデアは面白かったのに、後半「いじめ」と変わらなくなるのもダメ。適度にリアルな描写は悪くないけど、言語センスで三並夏に負けている。要するに野生時代は河出「文藝」路線で行きたいってことなんだろうけど、そもそも河出スクールカースト系小説ってパクる価値のあるほどもの? 白岩玄にせよ、この作者にせよ、等身大の日常から逃げずに向き合うのは立派だけど、「半径3mの人間関係を1段階メタ視」できた程度で満足するなよ。そこはあくまで出発点。まだまだ意地悪さが足りないなあ。
★★★★ (4点)
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by wakusei2ndnews | 2006-03-22 22:26 | novel

THE 有頂天ホテル

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 大晦日のホテル。年越しパーティーまであと数時間。元妻と再会して動揺する副支配人、汚職が発覚した国会議員、その元愛人の客室係など、さまざまな事情を抱える23人の男女が悲喜こもごものトラブルに直面する群像コメディ。『ラヂヲの時間』『みんなのいえ』に続く本家・三谷幸喜の監督第3作。その出来はいかに!?
 


e0076213_23131955.gif 役所広司さん! 佐藤浩市さん! 香取真吾くん! 松たか子さん! 西田敏行さん……。まだまだいます。こんなに豪華なメンバーの映画が観られるなんて、私はもうそれだけで幸せです! たっぷり笑えてちょっぴりジーンと来て、そして最後はYOUさんの歌声で幸せな気分になれます。香取クンが一度手放した幸運のお人形が戻ってくるところとか、松たか子さんが前向きに生きようって決意するところとか、とっても胸の中が熱くなりました。でも、これって実際のホテルであった色んな出来事が元になっているんですよね? ホテルで働くのって、大変なことなんですね。この後の役所さんと戸田恵子さんの関係が気になります♪
★★★★★ ★★★★★ (10点)


e0076213_2313447.gif 三谷幸喜の映画を見るのはこれがはじめてだったんだけど、伊丹十三が果たしていた役割を三谷は担いはじめてるのかなと思う。明朗快活公明正大、善男善女のためのストロングスタイルエンタテイメント。こーいうのもやっぱ年に一本くらいは必要で、それを宮崎駿にばっか押しつけといちゃいけない。
 次から次へとキテレツなキャラが登場する序盤からプロットが複雑に絡み合う中盤まではまったく見事なもので、これぞまさに映画の醍醐味って感じ。それだけに、終盤の収束がちょっともたついて奇跡感を生み出すに至らなかったのは惜しい。なんとかYOUの歌一発で落としてるのだけど、あれはちょっとズルいよな。
★★★★★ ★(6点)


e0076213_23141236.gif 三谷幸喜の映画進出3作目。TV局のテコ入れもあって大ヒット。まあ何も考えずに笑って楽しんで下さいよ、という典型的な映画である。ただ三谷の往年の名画を意識した作りがイヤミといえばイヤミで、今更『グランド・ホテル』だなんて思うのが正直なところ。携帯電話が出てくるから現代だろうが、それにしては高級ホテルに娼婦が入り込むなんて、大昔の映画みたいな設定である。ラストは生瀬を転ばせて「してやったり」のつもりなんだろうが、生瀬が悪役に描けていないので、スカッとしない。カウントダウンできない伊東四朗の支配人も同様。どうしてこうツメが甘いのだろうか。見ている間は楽しいけど、もの足りなさは残る。
★★★★★ (5点)


e0076213_23144536.gif 三谷演出は相変らずクドい。でも映画版『笑の大学』辺りと比べれば一目瞭然だが、単調なドラマ演出が抜けきれていないテレビ局の社員演出家よりはよっぽど観れるんだからビミョーな気分になる。長さを感じさせない詰め込み方、テンポのよさはさすがといったところでしょう。惜しいのは一番受けるはずの「鹿」のギャグが外し気味なのと、クライマックスの松たか子の説教が相変らずの学級会センスでちょっと興ざめな点。でもまあ、とりあえず観に行って損はない佳作ではあるでしょう。アリキリ石井のホテル探偵、YOUの歌うエンディングテーマ、篠原涼子のコールガールなど、絵的に決まったシーンがある辺り監督・三谷も成長したのかも。
★★★★★ ★★(7点)
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by wakusei2ndnews | 2006-03-09 23:14 | movie