<   2006年 05月 ( 3 )   > この月の画像一覧

永遠のフローズンチョコレート


e0076213_22265627.jpg

 (『多重人格探偵サイコ』を真に受けたような)連続殺人を続けるヒロインと、無気力で厭世的な(のがカッコイイと思っている)ボーイフレンド基樹。ふたりの無駄に気取った倦怠期に不死身の体を持つ少女・美和が現れて……。「えんため大賞」受賞作家、扇智史が思い入れたっぷりに語る話題作『永遠のフローズンチョコレート』を徹底レビューします!


e0076213_22303568.gif「あたしたちが何を望んでも――世界は世界の都合でしか動かない」……うまく言えないけれど、私たちの90年代ってずっとこんな感じの気分でした。とにかく世の中が絶望的に思えて、でもそれが巧く表現できなくて、苦笑するしかなかったんです。あれから10年、なんだか今の世の中は雑閥としているというか、割り切りすぎている感じがしますよね。でも、本当に人の痛みがわかるのは、この小説に共感できる特別に繊細な人なんだと思います。あの頃に青春を送った人にだけわかる、私たちの世代の宝物みたいな作品ですね。とにかく懐かしいです。それにしてもあの頃、私ってなんであんなに絶望してたのかなあ。
★★★★★ ★★★★★ (10点)


e0076213_22273742.gif  非常に評価の難しい作品。なぜ理保は人を殺すのか、その自明とされている動機やら不安やら危機やらが(90年代ならいざ知らず)現在では見えにくい。彼女は内面の言語化を拒み「気分」を強調するが、それを今の読者が共有するのは難しいだろう。しかし、実和という漫画・アニメ的な「虚構」を虐殺し、「いつの日にか不死人になる」というロマンを冷蔵庫の奥底に保留しながら、破滅へと続く日常に回帰するストイシズムは、虚構に溺れる凡百のラノベとは一線を画す。ここで描かれているのは「酒鬼薔薇聖斗」になることを拒絶した殺人鬼の青春だ(もっともそれにリアリティがあるかは別問題だが)。もうひとつの難点は、読んでいてひどく退屈なところ。まるで文藝あたりに載ってるブンガクのように。
★★★★★ ★ (6点)


e0076213_22285360.gif 「世の中なんてくだらない」とか言いつつ、一丁前に「寂しさ」だけは主張するという、イマドキの青春小説。しかも主人公の女子高生はお約束のメンヘル。こーゆーのを読むと生きる力が減ってる奴が増えてきてるんだなと思う。気持ちは分かるけど、「だから?」という読後感しか残らないのが致命的。それなりの終り方ではあるけれども、存在理由を「あそこ」に求めてるラストも弱い。「私は不幸」ということを再確認したい人たち、もしくは「不幸」であることを肯定されたい人たちのための小説なんだろうけど、そこから生まれるものはより強大な不幸でしかないことに気がつかないと。技巧の話をすれば、文体は平坦で特筆すべきものはなし。ありきたりの設定と会話の連続は正直言えば精読に耐えない。「桜庭一樹すら難しくて読めない」人が読めばいいのでは。
★★★ (3点)


e0076213_22291422.gif「終わりなき日常」のキツさを「僕らはこんな世界のつまらなさ(絶望)を知っているんだよ」という「乾いた暗さ」で表明することでウットリとナルシシズムに浸って回避……。これが90年代末に「頭が悪いけどなんとかカッコつけたい層」に一番流行ったキャラ売りで、本作もまたそんな「気分」をほぼ的確に捉えている時代遅れ作品。3年前にファウストに書きたかったんだろうけどね(笑)。本作に共感できる=頭の中身がまだ90年代のアレな人ってことなのでリトマス試験紙としては極めて有効。こういう絶望ゴッコで震えられている人は、一生絶望も希望も関係ないので安心して生きてください。陳腐さに自覚的な分、谷川流の方が問題理解も深く、こういった「キブン」を逆手に取って巧く娯楽作の構築に生かしているのがよくわかる。
★★★ (3点)
[PR]
by wakusei2ndnews | 2006-05-22 22:29 | novel

小さき勇者たち~ガメラ~


e0076213_1044252.jpg
 『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』公開から6年。「ガメラ」が生誕40周年記念作として復活する。伊勢志摩の美しい海を舞台に、母を亡くした少年がガメラの幼生と出会う……。
 監督は「平成仮面ライダー」シリーズの田崎竜太。


e0076213_1045227.gif やっぱり怪獣映画って子供たちのものだと思うんです。クライマックスの子供たちがガメラに宝石を届けるシーンはとても感動しました。たしかに、他の「平成ガメラ」シリーズと比べたら派手じゃないかもしれませんし、お話も子供向けかもしれません。けど、この映画には最近の特撮映画や、特撮ドラマが失ってしまった「大切なもの」がたくさん詰まっていると思います! 「大きなお友達」はいい加減子供たちに怪獣を返してあげていいはずですよね。きれいな海のある小さなまちの夏休み、子供たちの純粋な心に触れてなんだか心が温かくなりました。夏帆ちゃんも可愛かったです! 小さいお子さんのいる人はぜひ連れて行ってあげてください。
★★★★★ ★★★★ (9点)

e0076213_10451997.gif 子供の味方、緑の血を流して戦う健気さは昭和シリーズから、リアルな街崩壊の特撮と怪獣が人を喰う残酷描写、火球など設定は平成シリーズからの継承で、シリーズへのリスペクトを忘れないスタッフの心意気に感心した。ただ子供たちのリレーやバリケードなどをクライマックスにするのなら、やはり津田寛治は子供に無理解な父親にするべきで(最後に和解は可)、そういう黄金パターンを外すから感動がも一つ弱いのである。前半の子供だけの世界をもっとじっくり描くべきだろう。あと母親がいないという設定も上手に使ってほしかった。かようにいろいろ不満はあるのだが、もっとヒドいものを予想していたので、全体的にはなんとか許せるかな。
★★★★★ (5点)
  
e0076213_10453970.jpg 役者陣の演技は地に足がついている分、自衛隊や研究所の描写不足や展開の唐突さがもったいないなあと思いました。 「クライマックスシーンはあえて理屈を説明しなかった」らしいんですが、功を奏してるのかなと疑問です。まあ日常描写もお母さんの死やら病気の幼なじみやら詰め込み過ぎな印象なんですが。全体としてバランスが整ってなくて、整ってないのが平成ライダー劇場版みたいに良い方向に向けば良いんだけど、そういうバカ映画的な作りでもないですし。あとガメラのあからさまな「中に人間入ってますよ」的な動きが気になりました。幼体の時点で本物の亀を使ってる分なんかギャップが。 余談なんですがエンドクレジットの後に「撮影でつかわれた亀は虐待してません」的な表記があったのには時代を感じました。
★★★★ (4点) 

e0076213_10455494.gif そこそこの予算でそこそこのものをつくる」映画としてはイイ線行っている。田崎監督の甘酸っぱいセンスも悪くないし、「あえて」の着ぐるみ&ミニチュア特撮も安っぽいなりにがんばっている。問題は脚本で「子どものイノセンス」にすぐに寄りかかるシリーズの悪癖を見事に踏襲している上、平成ライダーよろしく大人社会(政府、自衛隊)描写が子供だましなのが辛い。主役の子供や父親役の津田をはじめ役者は良かっただけに残念。最近「大人が子供に夢を与える」作品という大義名分の下に「大人が子供に(身勝手な)夢を見る作品」が多く、本作もそのひとつには違いない。真摯で良心的なのはしっかり伝わるのだけど……。
★★★★ (4点) 
[PR]
by wakusei2ndnews | 2006-05-14 10:45 | movie

立喰師列伝

e0076213_7114797.jpg


 類稀なる「芸」を駆使して無銭飲食を行う“立喰師”たち。彼らは、日本の歴史の推移と共に、その様式を変化させていった……。あの押井守監督の最新作『立喰師列伝』がついに公開。『アヴァロン』で見せた撮影した俳優の画像を素材にデジタルアニメーションの要領で映画をつくる手法で、歴代の“立喰師”たちを紹介しながら戦後史をパロディ化する異色作を、拡大枠でレビューします!



e0076213_775025.gif 私は『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』から押井さんの大ファンなんですけど、最近の押井さんの映画は、難しい台詞ばかりすごく多くて、正直、見ていて困ってしまいます。こういう映画の面白さがわからないのは、私の理解力が足りないのかもしれませんけど、もう少し普通に映画を見たい人にサービスをしてくれてもいいのになあ、って思いました。あ、でも大好きな佐藤友哉さんや滝本竜彦さんが出ていたのはわかりました。見つけたときは「やった!」とか思っちゃって。……でも、他に楽しいところはなかったです。どうせCGでこんな風にしちゃうなら、銀二は天本さんにしてほしかったかも。『仮面ライダー the First』みたいに。
★★★★★ (5点)


e0076213_781158.gif 「思想」がいまやある種の講談として、表層的に消費されていることを考えれば、戦後思想史が思想のファッション化、俗物化の歴史であったことは自明であろう。ならば、戦後思想史のパロディ化とは、もともとパロディ化されていた俗流戦後思想史を再パロディ化することである。つまり本作は思想のパロディではなく思想のパロディの再パロディ化であり、戦後史の虚構化ではなくもとより虚構化された戦後史の再虚構化なのであって、そのことのヒントは、「自称」民俗学者という新聞記事のタイトルにも現れているのだが、そこまで分かった上で楽しめるかと言うと少し判断を留保したくもなるのであった。
★★★★★ (5点)


e0076213_782287.gif 『GHOST IN THE SHELL』以降ずっと「らしくない」映画ばかり作ってきた押井守だったが、今回はひさびさにのびのびと怪気炎を上げている。こんな馬鹿馬鹿しい与太話をよくもまあここまで大真面目にやってのけるもんだ。やっばマトモぶるより、こういう風に開き直った方がこの人はいい。『イノセンス』とかに比べて一見ものすごく間口が狭く見えるけれども、実はこっちの方がフツーに楽しい。映像も実験的すぎるかなと思ったけど意外と気にならなかった。適度に非現実感が出ててよかったと思う。 ただ、昔の押井だったら最後にもう一吠えしただろう。そこはさすがにトシかなという気がする。
★★★★★ ★ (6点)


e0076213_785474.gif 次から次に現れる立喰のプロ達のやり口を見るコメディとしても楽しめるが、奥行きはもっと深くこれは反権力者たちアウトローの戦後の抵抗の歴史の戯画化で時の権力や一般市民の投影として食堂があり、そこから金を払わず飯だけせしめるか?そういう戦いだ。だから物語は安保闘争以降ガラリと変わり軽薄なノリでのシステムとの戦いと自己言及の韜晦といういつもの押井節となる。そう考えるなら最後のインド人はオウムの象徴なのだろう。当初はノスタルジー色の強い話になるのかと思ったが終わってみると逆で開かれてる感じがした。立喰師は負けたわけでも消えたわけでもなく姿を変えて何度でも現れるということなのだろう。
★★★★★ ★★ (7点)


e0076213_792430.gif 押井はギャグの(そもそもの?)才能が枯渇したのではないか?というのが正直な感想。まあそれはともかく、友達ゲストで枚数増やす同人誌と同じ構造の作品だ。わあ、○○さんが出てる~こんな顔してるんだウフフとか、そういうのが楽しい人たち向けの一本。まさにオタクの見る夢とはこのことかと。大資本投入して、友達と楽しい現場ごっこ。ああ楽しいね面白かったね。オタクたちも明日の自分を重ね合わせて夢を見る。だがもちろんそれは、悪夢と同じものなんだけど。とかいいつつ、出演者の確認用にパンフレットは買ったんだけど。
★★★ (3点)


e0076213_79389.gif 若い頃に押井守の洗礼を受けた私は一生彼の新作に付き合わなくてはならないが、正直劇場版『パトレイバー』の2作目以降はお布施か税金を払いに行っているような気分である。今回は立喰師という虚構の存在を通して、日本の戦後史をパロってみようという試みなのだが、そっちに気を取られて、立喰師が詭弁を使ってタダ喰いをする輩であるという面白さがまるで描かれていない。ただだらだらと実録番組もどきが流されるだけ。観覧車のくだりなどを見ればヴィジュアルセンスは決して悪くないのだが、この人は放っておくとどんどん頭デッカチな映画しか撮らなくなるので、誰かエンターティンメントの方向へ連れ戻してほしい。お願いだから。
★★★★ (4点)


e0076213_795860.gif 相変わらずの独り善がりで、序盤からハズしてくれるけど戦後史総括をこう見せるという発想は抜群に面白いし、ネタ自体も(わかれば)かなり笑える(春樹ネタとか)。普通、こういうテーマを扱うとただ時代につばを吐いて終わるのだけど、押井の愛憎は何重にも捻くれている。一番興味深いのは(分量的な問題が大きいのだろうが)立喰師たちの戦いが80年代で途切れている事。80年代的な消費文化は、アウトロー気取りの困ったちゃんにとって最後の「都合のいい悪役」だったのだ。演出的にはダメダメな映画だが、90年代の、そして21世紀の立喰師たちがどんな闘争(それは従来のベタな「俺VS世界」ではありえないだろう)を挑んでいったのか、ぜひ知りたい。続編希望。
★★★★★ ★ (6点)
[PR]
by wakusei2ndnews | 2006-05-11 07:10 | movie