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嫌われ松子の一生

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 『下妻物語』の中島哲也監督待望の最新作がついに登場!
 山田宗樹の同名原作をミュージカル風にアレンジ。「耐える昭和の女」の転落劇をコミカルに描く話題の映画を取り上げます。



e0076213_4163316.gif こんなに悲しいお話なのに、観終わったあとになぜか心が洗われるような気分になっていました。帰り道では思わず映画の中のミュージカルの歌を口ずさんじゃいました! こってりとした味わいの映画なのに後味がさわやかなのがすごいです。この後に引かない口当たりのよさって、絶妙ですよね。監督とケンカしながらがんばった中谷美紀さんの好演に拍手ですね。本当に不思議な映画でした。それにしても『下妻物語』のときはほとんど映画館に人がいなかったのに、『松子』はCMもいっぱい流れるし、『ニュース23』では監督と筑紫さんが対談しちゃうし、扱いがすごいですねー。
(9点)★★★★★ ★★★★



e0076213_4153022.gif 前作『下妻物語』で古くさい熱血友情モノの味をカラフルなCGで現代に甦らせた中島監督だが、今回は昔の日本映画が得意とした一人の女のお涙転落劇を同様の手法で見事に復活させた。やや滑りがちな小ネタとケバケバなCGで誤解されがちだが、この監督は映画というものをよくわかっていて、泣かせ所のカメラワークや役者の見せ方に狂いがない。ミュージカル演出にしても本家アメリカの『シカゴ』や『プロデューサーズ』なんかより遙かに本物らしい躍動と情緒がある。劇中の「今度こそ死んだと思った。でも次の瞬間には歌っていた」という台詞どおり、最後まで前向きだった松子の一生に素直に感動できた。助演では黒沢あすかが良かった。
(10点) ★★★★★ ★★★★★



e0076213_4151555.jpg 中島監督の前作『下妻物語』や『木更津キャッツアイ』で描かれた、「空虚なこの時代に生きるボクたちには、確かなものなんて何もない。でもだからって90年代みたいに自閉せず、身の回りのファストでジャンクな現実から生き甲斐をやりくりし、カラッと笑い飛ばしながらシブトク生きよう!」という惑星開発委員会好みの00年代的テーマを、テンポよい映像技術と演出で「昭和」のバイタリティを圧縮・戯画化することで高度に普遍化・結晶化した到達点。……なのだが、00年代も折り返しを過ぎた今、そのコミカルなモードが、ステージの低い「だめ萌え」の域を越えていないのではないかという嫌疑もまた拭えず。ラストの取ってつけたような、あの世での妹との和解というヌルい救済は、少なくとも不要だった。
(6点)★★★★★ ★



e0076213_4144845.gif ベタベタの泣かせ話である原作を中島『下妻』演出でミュージカルに、というアイデアの勝利。こんな話をよくもまあ喉越しよく見せたものだなと素直に感心する。ちゃんとサントラが欲しくなるのもミュージカルとしては大事なこと。ただ、前作と比べた場合、原作の力の強弱がそのまま作品のインパクトを左右してしまった感は否めない。たぶん、この映画を観た人のたほとんどが「面白かった」「笑えた」「泣けた」と言うだろうが半年後に目を輝かせて「この映画が好き!」と語る人はまずいないだろう。TBSの隙のない(そしてあざとい)プロモーションも含めて、完成度の高いサプリメントを食べているような気分になる。間違いなく今年観た映画の中では1、2を争う出来なのだけど。
(7点)★★★★★ ★★
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by wakusei2ndnews | 2006-06-25 04:16 | movie

メカビ


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 講談社の「オタク雑誌」がついに始動! 『電波男』の本田透を擁したその雑誌の名は「メカと美少女」……略して「メカビ」!
 「男はみんなオタクである」という挑発的なコピーで登場した創刊号を、徹底レビューします。


e0076213_123144.gif 私、本田透さんって、可哀相な人だと思うんです。本当は三次元の恋人が欲しいし、自分が言っていることがおかしいって心の底では気付いていると思うんです。なのになんか恥ずかしくなって今更「彼女が欲しい」って言えなくなっているような気がします。この雑誌を読んで、本当は「メカと美少女」以外のものが欲しい人たちが素直になれないで作ったんだなあ、と思いました。ごめんなさい。個人的には『ディスコミュニケーション』の植芝先生や『R.O.D』の倉田先生のインタビューがすごく面白かったです。なんだか嫌な感じのする雑誌だけど2号が出たらまた読んじゃうと思います。
(7点) ★★★★★ ★★


e0076213_1233218.gif アカデミック系の記事が物足りないし、引用の仕方が乱暴だなあと思う部分がある。せっかく筑摩書房がスポンサーなのに、どうしてどの評論にも参考文献がないの? 明示的には書いてないけど、本田透のモトネタが八〇年代の教養ブームにあるんだなあと思った。ポトラッチとかの人類学ネタは栗本慎一郎で、一神教や多神教の話が中沢新一あたり。近代と中世を図式的に説明するのは『構造と力』で、学生運動から恋愛へというのが上野千鶴子。そして人間は共同幻想の中でしか生きられないんだというのがまさしく岸田秀。本田透は学生時代に読んでたんだろうなあと思うけれど、読者はモトネタのモトネタも読んでおかないと、モトネタの恣意的な解釈に騙されるよ、って危惧を感じる。クリエイターへのインタビュー系は、落ち着いて読めて良い。
(5点) ★★★★★


e0076213_1234655.gif オタクの財布に目をつけたオヤジと権威による箔付けを求めた萌えオタクががっつり手を組んだ結果生まれた雑誌。つーか『批評アフタヌーン』って感じ。思惑が噛みあってるようで噛みあってない所が素晴らしい。萌えオタク的な美意識の露出を極力隠し知的な印象を与えていてオタクの歪んだ性癖から来るエロキモ度が足りない。簡単に言うと『げんしけん』的。あと本田透が電波男で振り上げた拳を何とか軟着陸させようとしてるなぁと思った。それにしてもアフタヌーンネタ多すぎ。まぁ植芝理一先生のインタビューが読めたのは嬉しいけど。次は鬼頭莫宏先生お願いします。
(5点) ★★★★★


e0076213_124530.gif 天下の講談社でよくもこんな企画が通ったものだなと驚愕。濃い記事をたっぷりと読ませる希少なメディアとしてがんばって欲しい。が、雑誌のカラーが本田透系一色なのはあまりに勿体ない。オタク文化のポデンシャルって、それだけで括れるものではないでしょ? 「メカと美少女」というけれど、みんな本当にそれだけで満足できる? こういう場ができたこと自体は面白いと思うけど、もう少し色々な立場の書き手を集めてバラエティに富んだ誌面にしないとせっかくの場を生かしきれない。うまく転がればかなり面白い本になるはずなのだけど。まずはきちんとレールに乗せられるかどうかが勝負でしょう。
(5点) ★★★★★
 
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by wakusei2ndnews | 2006-06-23 01:24 | others

ソラニン

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 大学は出たけれど……状態のモラトリアム主人公たち。趣味のバンドは泣かず飛ばず。でも諦めて就職する覚悟もない。できることと言えば、青臭い文句を繰り返すことだけ……。
『ひかりのまち』で「マンガ読み」の熱い支持を受ける一方で、その小学館的な隙のないあざとさにアンチも多い浅倉いにお。先日、最終第2巻が発売された『ソラニン』を徹底レビューします。


e0076213_1494683.gif もう2巻は涙が止まりませんでした。現実ってとっても厳しくて、辛くて、灰色で、代わり映えしない毎日がずっと続いていくのかなあって思っちゃうけど、ギターを片手に思いっきり叫ぶだけで、こんなに世界って豊かになるんですね! やっぱりこんな時代だからこそ、つまらない大人になんかならないで一生懸命夢を追いかけて欲しいです。なんだか昔大好きだった尾崎豊さんのCDをまた聞きたくなっちゃいました。ああ、私も種田君みたいな彼氏が欲しいなあ。インターネットにはなんだか「世の中の大きな流れ」に負けないようにがんばっていそうなことを一生懸命書いているオトコノコたちがたくさんいるから、もしかしたら素敵な出会いがあるかもしれませんね!
(10点) ★★★★★ ★★★★★


e0076213_1491571.gif 前作「ひかりのまち」を読んだ時はうまさや完成度が逆に弱点に見えてしまった。90年代のサブカル系マンガの影響が露骨なのも辛い。その限界を本作では半歩だけ抜け出して普通に読める漫画になってると思う。今までの上から見たようなクールな作風も、20代後半のモラトリアムという作者にとって身近すぎるモチーフなだけに身につまされるし登場人物に感情移入できた。そして2巻以降のライブにいたる流れもちゃんとカタルシスがある。その意味で大きな分岐店になる作品だと思う。でも一番偉いのは芽衣子ちゃんみたいなブサイクスレスレの可愛い子の魅力をちゃんと描けてることだと思う。ソラニンニン。
(5点) ★★★★★


e0076213_149060.gif 登場人物全員、ダメ人間。モラトリアムにも程があるユルい人間関係。バブルを知らない子供たちの、青臭い絶望。巧妙に仕組まれた情動喚起のためのドラマツルギー。鼻につくほど単館上映のオサレ映画テイスト。あらゆるガジェットがリトルモアとか銀杏BOYZの好きなサブカル女子を狙い撃ちすぎて、読んでるこっちが気恥ずかしくなる。正直、こんな不愉快なマンガは大嫌いなんですよ。絵が巧いのもムカつくし、このあざといストーリーをネタではなく素でやってるんだろうなあっていう作者の無防備さにも絶望を禁じ得ない。……にもかかわらず、こぼれ落ちる涙。いやあ、自分がこんなもんで「感動」を消費するほど動物化していたとは気づかなかった。
(8点) ★★★★★ ★★★


e0076213_1483438.gif ありもしない「大きな壁」に拳を振るっているつもりで、実は自分の隣を走る小さな存在の足を引っ張ることしか頭にない……今どきカウンターカルチャーを気取っちゃう人間や、安易な「モラトリアムもの」はすぐにこの罠に陥ってしまう。本作も読み始めたころは、「また『こんな時代だからこそあえてロック』か」と失笑したものだったが、後半のあざとく巧妙な転がし方には素直に感心。これは種田=カウンターカルチャーの死をそれなりに受け止めた上で、愛と訣別を込めて捧ぐささやかな葬送曲に他ならない。まあ、死んだ存在を神棚に祭り上げて、本当に諦めなきゃいけないものから最後の最後で逃げている甘さはあるが、ジャンルの中で頭一つ抜けた佳作であることは間違いない。
(6点) ★★★★★ ★
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by wakusei2ndnews | 2006-06-13 01:49 | comic