<   2006年 07月 ( 3 )   > この月の画像一覧

少女七竈と七人の可愛そうな大人


e0076213_23273097.jpg
 
 淫乱な母親を持ったがために、数奇な運命に翻弄される少女・七竈。ライトノベル界の林真理子にしてお姫様・桜庭一樹がリリカルかつファンタジックな文体で贈る話題の新作をレビューします。



e0076213_233198.gif もしかしてこの兄妹(姉弟?)って、いけないことしちゃうのかも……と思って、ドキドキしながらページをめくっていたのですけど、普通に(そして綺麗に)終わっていって安心しました。最初から色んな男の人と関係を持つ女の人の話から入っていったので、七竈ちゃんの未来を心配していたのですけど、考えすぎだったみたいです。それにしても、大人になるって何かを失うことなんですね。うう、悲しい……。でも、この小説はそんな悲しさの中に宿る美しさがとっても素敵な小説です! う~ん、これが文学って感じですか? なんかウットリしちゃいます。まだ若いのにこんな小説書いちゃうなんて、桜庭一樹さんってすごいんですねぇ。
★★★★★ ★★★★ (9点)



e0076213_23315151.gif 少女で半身としての少年で女の性で報われない悲恋で成長物語で感傷的でエセ古風な少女小説風の文体で、とまあ、目立って言及されやすい点を列挙すると、毎回とは言えそのあざとさにうんざりする。幼年時代の比喩としての鉄道模型なんかも分り易すぎ。ただし、個々の要素を取り上げて着目すると詰まらないのだけど、シンプルな成長物語の構図の周囲に「可愛そうな」大人たちを配し、書割めいたミニマルな文体で人形劇の様にキッチュに仕立てた雰囲気で、作品総体としては器用にまとまっている。先輩後輩の掛け合いや、いんらんの母とビショップの乾いた語りも良い味を出してて小説として楽しい。作家として成熟した桜庭一樹が窺える作品。
★★★★★ ★★ (7点)



e0076213_2332586.gif 序章の「辻斬りのように」を「野生時代」で読んだときは、これでは、本人の過去の著作の焼き直しというかその続きが読みたいだけではないか、と怒りを覚えた。ただ、単行本で読むと、桜庭が一貫して追い続ける、「少女と少女を取り巻くセカイ」というテーマは不変だし、いちいち視点を少しづつズらして行く描写はさすがに巧みなので、なるほど、それなりの読後感は残るように出来ている。桜庭という作家の初物買いにはうってつけかも知れぬ。しかし、本人のキャラの問題なのか、世間との接触を極力抑えようとする少女の純血主義ぶりがまだ少し鼻につく。少女・七竈が母と同じ道をたどる過程を描けるかが作家・桜庭一樹の分岐点のような気がする。
★★★★★ ★ (6点)



e0076213_23323832.gif 『ブルースカイ』が「昔の日本SF+5年前に流行ったセカイ系気分」なら今回は「古風な少女小説の装いで小奇麗にまとめました」って感じ。「なんだって勉強すれば器用に書けますよ」という自己主張をしたがる所といい、実際にそれができてしまう所といい、一般文芸に本格進出すれば姫野カオルコより早く林真理子になれるかもしれない(笑)。それは同時に内容が簡単に因数分解できてしまうつまらなさがあるということでもある。そして、現時点での桜庭の市場はこのような因数分解をありがたがるヌルい場所だということなのだろう。作者の器用さが得がたいものであることは間違いないのだが、「ライトノベルからの背伸び組」のために設計されたことが丸わかりの「あざとさ」「安っぽさ」はどうしても弱点になってしまう。
★★★★★ (5点)
[PR]
by wakusei2ndnews | 2006-07-18 23:32 | novel

涼宮ハルヒの憂鬱

e0076213_10205253.jpg
 原作は角川スニーカー文庫の人気ライトノベル。京都アニメーションの高い作画力などで、2006年春期のTVアニメで断トツの話題作となったアニメ版「ハルヒ」を取り上げます。



e0076213_10214451.gif 第1話がなんかいきなり番外編からはじまってびっくりしましたけど、これって原作のお話がバラバラの順番で放映されたんですね。少し戸惑っちゃいましたけど、こんな楽しいアニメは久しぶりでした。文化祭での映画作りとライブ。夏休みの合宿。日曜日の草野球大会……。やっぱり青春っていいですよね! でも私、あんまり高校の頃は友達いなかったから、こういうのってちょっと羨ましいです。だからきっと、いい歳をしてアニメが大好きなんですね、楽しいからいいけど。個人的にはハルヒがなんだかんだで「キョンさえいてくれれば」って思っているところがいじらしくて好きです。
★★★★★ ★★★★★ (10点)



e0076213_1022336.gif「日常にすがるくせに非日常を求める(逆もあり)」という心裡を前提とし、枠組みを守りつつ好きなことをやるというスタッフ(=SOS団)の姿勢はなるほど、巷でささやかれるようにエヴァっぽい。ただしエヴァと大きく違うのは物語の視点が常に個人であり、大きな舞台装置を必要としていない点だ。これが時代の気分なんだなと思う。ただ、切り取ったパーツだけ見ても面白いという原作のスタイルまでもを踏襲したスタッフの力量は素直に評価すべきだし、原作が特殊なので比較が可能かどうかは不明だが、ラノベ原作のアニメだってやり方次第でヒットできるのだという事を示した功績も称えられていい。食わず嫌いはもったいない、ある意味怪作。
★★★★★ ★★★ (8点)



e0076213_10222822.gif〈ビューティフルドリーマー〉のファンが書いたギャルゲー風小説を〈エヴァンゲリオン〉のファンがアニメ化した、という感じ。それが幸いしたのか、原作で鼻についたSF・ミステリ書評系サイト的な「加齢臭」は軽減されていて、いかにも現代風の装い。もっとも、中身の精神性は約20年前、SFファンから絶賛されていた頃の竹本泉あたりと変わっておらず、見かけほどに新しくはない。むしろ、その安心感で売れているんだろうけど、当時の幼稚な少女漫画趣味を引きずったSFファンや、30代にさしかかった「遅れてきたおたく」が感性の若さを強調する道具としては最適の物件で、だからこそアニメ化で「発見されて」大ブレイクしたんだろうね。
★★★★★ ★★★ (8点)



e0076213_10225224.gif 素直に「青春がしたい」と言えないオトコノコが、クドクド見苦しい(そして微笑ましい)言い訳をしながら不思議ちゃんを消費する物語。オタク男子のプライドを守ってあげつつ、弱点を突いてゆくクレバーな原作にはある意味感心していたのだけど、このアニメ版は別の意味で大したもの。原作のメタフィクショナルな側面をうまく強調した構成、映画的な手法を駆使した凝った演出、嫌味にならない程度に散りばめられたパロディと、力のあるスタッフの適度な自己主張が噛み合った完成度の高さは認めざるを得ないでしょう。この10年アレなオタク男子たちの心の拠り所となっていた「メタ萌えもの」の終着点でもあり、限界を露呈した作品でもある。詳しくは近日UP予定の座談会で。
★★★★★ ★★ (7点)
[PR]
by wakusei2ndnews | 2006-07-15 10:22 | others

デスノート(前編)

e0076213_233327.jpg


 「週刊少年ジャンプ」での連載スタートと同時に、その衝撃的な内容と独自の世界が話題を呼び、圧倒的な人気を巻き起こした大ベストセラー・コミック「DEATH NOTE」(作・大場つぐみ 画・小畑健)が、ついに実写映画化!。
 金子修介を監督に据え6月前編・1月後編、異例の2作品連続公開となる本作。まずはその前編をレビューします!



e0076213_24131.gif 私って、この原作の漫画、面白いけれどなんかキャラに入り込めなかったんです。でも、大好きな藤原竜也君が出るので観に行きました。やっぱりこんな風に簡単に人が死んでいく作品って、人間の命を大切にできていない気がして嫌な気分になったけれど、面白いことは面白いんですよね……。観ている間はそんなこと気にならないくらいドキドキしていたし、月とLくんがはじめて出会うシーンなんかゾクゾクしちゃいましたし。個人的にはリュークの声が中村獅童さんだというのがビックリでした! 悔しいけれどめいいっぱい楽しんじゃったかも。私もデスノートの悪の魅力にハマっちゃっているのかもしれません~。
★★★★★ ★★★★ (9点)



e0076213_243385.gif 映画として見るなら金子修介の作品の中では劣るけど、原作モノのの映像化という意味では無難な出来。冒頭に次々犯罪者が死んでくのはテンションが上がる。その後の展開は冗長だしキラ思想に対して月と秋野が議論してるくだりは見てられないけど、後半の美空ナオミの話からラストまでのオリジナルの流れは面白かった。特にLと月が対面するシーンはカッコいい。ただ全体的にチープさが露呈していて逆に漫画がいかにうまく誤魔化していたのかを感じた。例えば伊藤和典が脚本を書いたら、もっと重厚な感じに仕上がったんだろうけど、それは多分全然別モノなんだろうなぁ。ミサの出番が少ないのも不満だけど、それも含めて後編に期待。
★★★★★ (5点)



e0076213_245943.gif Vシネ風味の演出と呪怨メイクのLたんが最高でした。う~ん、「おもしろい/つまらない」の二元論で言えば肩肘張らずに楽しめて、無難におもしろいんだけど、原作の緊迫感もなければ過剰な内面描写や登場人物の百面相もなく、実写風景も原作の緻密な背景描写よりも劣ってる感じ。再現できているのはLの人間離れした奇怪な動きくらいなもので、逆に漫画原作の凄さを再確認することに。この際、再現性なんて無視して原作とは逆ベクトルにはっちゃけても良かったんじゃないでしょうか? 全編、ジャニタレ出演のミュージカルにしちゃうとか、テニスバトルや紅白歌合戦みたく本編とは無関係な場面ばかり盛り込んで遊ぶとか……酔っ払いオヤジの後出しジャンケンみたいないちゃもんで申し訳ないけど。ファンなら楽しめるのか、逆にファンにはキツいのか、正直微妙なところ。
★★★★ (4点)


e0076213_251862.gif キャスト表を観た瞬間、いろんな意味で笑ってしまったこの映画版。蓋を開けてみれば(よくも悪くも)最近の金子修介らしい無難なつくりでそれなりに楽しめた。マニアは褒めづらいだろうけど、とりあえず入る小屋に迷ったらこれを観ておいて損はしないくらいの出来ではある。要するにこれって「ジャンプでも『NANA』みたいな当て方ができるはず!」という目算でやっているマーケティング主導の作品なんだけど、その使命は十二分に果たせるんじゃないだろうか。キャスト表を見て笑ったのは、『NANA』のときと同じコスプレ感を覚えたからに他ならないわけで、独立した映画としてはそこそこの、メディアミックス作品としてはかなりの評価を与えてもいい作品でしょう。
★★★★★ ★ (6点)
[PR]
by wakusei2ndnews | 2006-07-12 02:05 | movie