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それでもボクはやってない



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『Shall we ダンス?』の周防正行監督の最新作。痴漢冤罪を通して日本裁判の実態を描く社会派映画。冤罪で捕まったあるフリーター青年の戦いの日々を描く。



e0076213_1435187.gif 女の子に酷いことをするような男の人は、どんどん取り締まってしまえばいいってずっと思っていて、この考え自体は今も変わっていないのですけれど……警察ってよくニュースでやっているみたいにやっぱりものすごく問題の多い所だったんですね。ついさっきもテレビで冤罪事件の報道を見ました。本当に痴漢するひとをなくすためにも、日本の警察や裁判を変えていかないといけないなってすごく思いました。明日からもっとちゃんと新聞を読んで、こういうことについてしっかりと考えたいと思います。映画がはじまってから終わるまで、あっという間で一度もほかの事を考えなかったんですけど、見た後は暗い気持ちになりました。
★★★★★ ★★★ (8点)


e0076213_1442811.gif「男は全員、痴漢をする動機がある」。という台詞には絶望させられた。ただ触れ合いたいという気持ちが大きくなってしまっただけなのに。それはそれで許されることのない無法であり罪なのは百も承知。この映画で痴漢という犯罪を選んだのはただの例えで、今の日本の裁判が孕んでいる矛盾や問題点をしっかりと見定めるべきだが、僕はそれよりも男と女という二つの人間が存在する社会での生きていき辛さ。を再確認してしまった。もっさい男の証言よりも女子中学生の涙ながらの証言を誰でも信用してしまうよなあ。そういう人情っていうものも時には必要だとは思うけど。人が人を裁くこと自体矛盾のかたまりなので「とりあえず」の判断しかできないのか。本田博太郎の怪演は必見。
★★★★★ ★★★ (8点)


e0076213_1445242.gif 法廷の審理の行われている空間と傍聴席は、一見してスクリーンと観客のようにも思えるのだが、実際それをスクリーンの中の出来事として観ていると、淡々と事実の確認を進めてゆく判事らの冷徹な態度に反して、その進行具合に一喜一憂する傍聴席の芝居の方がむしろ際だって感じられるといった逆転が起こっている。当然このような逆転は見方さえ違えばそもそも起こりえぬものではあるのだが。
 手の行方をめぐる議論、現場で被告を弁護した女性の発言の解釈の食い違いが、観ること、聞くことの記憶として蓄積される際の恣意性を暴露して、劇中の台詞にもあるように「何が本当のことかわからなくなる」ほどに単一の視線を揺さぶり、最終的に視線を逆転させる過程はなかなかスリリング。
 役者等の好演も手伝って、細かい制度に関することなど、説明的な台詞も巧くさばいており、普通の社会派映画としても十分鑑賞に堪える。エンディングの弦楽四重奏っぽい曲も良い。ただ、学校教師が無理矢理生徒に見せてしまいそうなところが心配ではある。
★★★★★ ★★ (7点)


e0076213_145797.gif 前作の微温的な中年妄想の肯定話にはまったくノれなかったのだけど、本作の迫力にはまいった。裁判というこの社会を根本から支えているシステムの暴力性、危うさを突きつける、と描いてしまえば一本の矢を真っ直ぐに飛ばすだけの作業に思えるが、単純で強烈な構造であるが故にごまかしのきかない力量が求められ、細部では逆に小テクを連発しなければならない――そんな困難な道を選択し、見事にやりとげた良作だと言えるはず。脚本の構成の妙、ドラマチックになりすぎず、かといってドキュメント臭くなりすぎない演出の匙加減、どれを取ってもお手本のようだ。難点があるとすれば、もう少し観客を巻き込んだ内容(裁判員制度導入問題に絡ませるとか)にしないと切込みが浅いのと、こういった社会派ネタを喰らうと思考停止して褒めまくる義憤系ファンがウザいことくらいだろうか(笑)。
★★★★★ ★★ (7点)
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by wakusei2ndnews | 2007-02-24 14:03 | movie

どろろ

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 手塚治虫の往年の名作コミック『どろろ』を、『黄泉がえり』『カナリア』の塩田明彦監督が映画化!
 妻夫木&柴咲カップル主演で話題の映画を徹底レビューします!
 



e0076213_1131116.gif もう、私の大好きな妻夫木クンと柴咲コウさんが出ているだけで、おなかいっぱいです! まず映像がハリウッドの映画みたいにすごくて、実写でもこんな風にファンタジーの世界が作れるんだなあ、って感心しました。アクションもカッコ良くて、次はどんな戦いがあるのか楽しみに観ていたんですけど、最後は突然家族の物語になってビックリしました。でも、ちゃんと中井貴一さんのお父さんや瑛太くんと仲直りできて良かったです。エンディングのミスチルは、あんまり映画の雰囲気とあっていなかったけれど、好きなので許します!
 続編がありそうな感じだったので、今から楽しみです。
★★★★★ ★★★ (8点)



e0076213_1132886.gif 「何に見える?」ってのはきっとこの映画のことを言ってるんだろうね。CGと無国籍サウンドの組み合わせで作られた、出自も根拠もよくわからない混沌とした映像が、百鬼丸の継ぎ接ぎだらけの身体をメタファーとして語られる。無口な男と饒舌な女のロードムーヴィーというプロットは『カナリア』と共通のものであるし、実際、前作と酷似したカットがいくつもある。その制作規模に見合った制約を受けるであろう商業映画の最前線でも一貫した問題意識を探求し続けている手腕は評価しないわけにはいかないだろう。
 興味深いのは、複数の名を持っていた百鬼丸から、どろろは名を盗んで「兄弟」になるが、真の「兄弟」である多宝丸に出会い、母に遭遇するに至って、多宝丸という名の指示対象が分裂するのである(百鬼丸が弟の名を盗んだとも言える)。百鬼丸はその呪われた運命をどろろに「目を介さずに」伝え、取り戻した真の目で再びどろろと対峙する。壁というより、どちらかといえば巨大な張りぼてのような物体が建つ丘で、血統によって保証された単一性を巡って家族は再会し、そこで百鬼丸は「継承」と「断絶」を同時に選び取る。高くそびえ立つ城を出て、広い大地を歩きだすカットはこの上なく清々しい。
 それにしても百鬼丸はもう生殖器を取り戻したのだろうか。もし今後の展開があるのなら、それはとても重要なことだと思うのだが。
★★★★★ ★★★ (8点)



e0076213_1135276.gif 評論家のミルクマン斉藤は、親(大人)たちの身勝手さに傷つけられながら、なおも逞しく生き、自立するこの映画の主人公たちを過去の塩田作品の子供たちと結びつけ絶賛しているが、『害虫』や『カナリア』のような現代を舞台にした傑作を作った後で、なぜ今一度、出鱈目な戦国時代に舞台を移し、マンガの実写化という形でそのテーマを追究する必要があったのかを私は問いたい。それは追究ではなく、明らかに作り手の後退である。寓話に甘んじている。そもそも作家性うんぬん以前に、映画としてこれはどうかと思う箇所が山盛りある。特にヒドいのはラストだろう。瑛太が死んでから事件が団子式に三つ四つ急展開する。無茶もたいがいである。
★ (1点)



e0076213_1164430.gif 基本的に『カナリア』と全く同じ話。間違った父親(オウム、中井貴一)に(成長する)身体を奪われた主人公の男の子(光一、百鬼丸)が、それを取り戻すために旅立つが、最後は自ら「奪われた家族の回復」を断念して、旅の途中で知り合った少女(ユキ、どろろ)と新しい家族をつくるべく旅立つ、と。
 だが、こういった主題・プロットがB級娯楽活劇であるこの映画の中で十分に展開されたとは言えず、散りばめられた暗喩もあまり機能していない。終盤の混乱した展開はその帰結である。
 単純に娯楽作として考えても、終盤は「敵の城に乗り込んで大立ち回り」以外にあり得ないはずなのに、わざわざラスボスが城の外まで出てきてタイマン張ってくれるあたりでかなり白けてしまう。構成、あるいは予算配分のミスだろう。
 あの『どろろ』をやる以上、こういった主題を孕むことは回避し得ないのだけど、展開が下手糞なせいで結果として、本作は主題が映画の足を引っ張っている典型例となっており、完成したフィルムは劣化『カナリア』以外の何者でもない。
 付け加えるなら、ゼロ年代版『どろろ』の成功例は、言うまでもなく『カナリア』であり、『鋼の錬金術師』である。本作を観て引っかかるものがあった人は、ぜひこの2作品を手にとってほしい。
★★★★ (4点)
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by wakusei2ndnews | 2007-02-19 01:16 | movie

鉄コン筋クリート

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 松本大洋原作の人気コミックスが遂に映画化! 
 スタジオ4℃がその技術の粋を凝らした話題の映画版をレビューします。





e0076213_033586.gif 感動しました! 年末年始にかけて2回観に行って、今も部屋でひとりでシロの物真似をしています……! と、いうのは流石にうそですが、それくらい感激したのは本当です。本当に純粋なものって何なのか、この映画から私は教わった気がします。映像もとってもきれいで、もっと汚いイメージだった原作の「宝町」が、なんだかテーマパークみたいにカラフルで楽しい町に思えてきました。声優さんもすっごくよくて、蒼井優ちゃんも、クドカンさんも、そしてモックンも、あのキャラのイメージにピッタリで最高にハマっています! オタクの人って芸能人ってだけで嫌っちゃうけど、それって偏見だと思いまーす!
★★★★★ ★★★★★ (10点)




e0076213_035384.gif 映像的には原作とかなり異なるテイストながらも確固たる世界観を構築していて良い出来。キャスティングもシロ・クロの二人を除けばなかなか味のある声が揃っている。ストーリーも「シロとクロの物語」としては手際よくまとまっているのだが、ただ、原作の根底にあった「失われゆく『昭和』の風景への惜別」というか、町が人を作り人が町を作るという関係の消滅に対する寂寞感、そういう部分は(おそらく意図的に)排除されている。原作が描かれた頃とは時代も変わってしまっているので、それは映画として正しい選択なのだろう。しかしそのために宙に浮いてしまった部分も多いし(例えばもう一方の主役である木村の存在)、それらを無視して「シロとクロの物語」だけを取り出してどれほどの意味があるのだろうかとも思う。原作を読んでない人にはそれほど気にならないことなのかもしれないけど。
★★★★★ (5点)



e0076213_05216.gif 松本大洋の原作コミックは昔友人から貸りて読んだ。そのときの感想は絵のテクニックは凄いが、内容は陳腐だな、というものだった。それから10年以上経過し、今回アニメ映画化されたわけだが、印象は全く同じ。アニメのテクニックは凄い。原作の、いい意味でごちゃごちゃした街を見事にデジタルアニメ化して見せたのにはびっくり、しばらくは口をあんぐり開けて見ていた。けど凄いのはそこまでで、光と闇のわかりやすい象徴であるシロとクロを始め、ステロタイプのキャラクターばかりが登場して織りなす物語は原作と同じで薄っぺらく陳腐。観念的なまま終わらせてしまうラストもつまらない。蒼井優が声優としても優秀なのはわかったが。
★★★ (3点)



e0076213_053532.gif 『マインド・ゲーム』のような衝撃はないものの、少なくとも映像表現に関してはスタジオ4℃がこれまで蓄積してきたノウハウの集大成ともいえる完成度を持っている、と言えるだろう。特に美術と音響の達成は特筆すべきものがある。蒼井優も巧い。しかしその反面、シナリオ面はボロボロと言うしかない。そもそも松本大洋って90年代前半のオモイデに頭をもってかれた中年サブカル(下北病にかかっている感じの)どものせいで妙に値上がりしているけど、はっきり言って中身はない(笑)。暴力性と表裏一体の無垢さをドッベルゲンガーという陳腐なアイテムで表現しちゃうあたりの貧困な想像力は、今時辻仁成でもやんないわけで、この人間理解の浅さは『永遠の仔』を観て心理学部に殺到する学生並。『ストロベリーショトケイクス』のときも思ったのだが、90年代前半サブカルを現在に耐えうるものにするためには、かなりの取捨選択と洗練が必要だと思う。あの頃のオモイデを大切にしたいなら、もっと頑張ってください。
★★★★★ ★ (6点)
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by wakusei2ndnews | 2007-02-17 00:05 | movie